長崎県内 スクールソーシャルワーカー 問題多様化で役割高まる 待遇に課題 1人で10校超の受け持ちも

子どもたちの環境を整えるため情報を共有するスクールソーシャルワーカー=佐世保市、市青少年教育センター

 子どもを巡る問題が深刻化、多様化する中で、福祉と教育を結ぶスクールソーシャルワーカー(SSW)の役割が高まっている。子ども同士のトラブルに見えて背景には家庭問題が絡むケースがあり福祉の視点が欠かせないからだ。長崎県佐世保市でも不登校や家庭環境に関する相談が多く、ニーズの高まりと共にSSWからは待遇改善を求める声も上がる。
 「問題のある子どもは孤立した家庭が多く、十分な支援のネットワークが届いていない」。同市でSSWとして活動する女性は現状を説明する。
 SSWは不登校や虐待、貧困など子どもが抱える問題の解決を図る福祉の専門職。課題がある子どもの環境を整えるため家庭訪問するなどして関係機関と連携し対応策を検討している。
 ひとり親家庭の一例では、夜の仕事をしている母親が朝起きられず、小中学校に通う子どもたちも学校を休むといった不規則な生活を送るケースがあった。校納金の未払いが続き、借金も抱えていた。学校からの連絡でこの家庭と接触したSSWが生活保護の申請手続きを手伝うなど生活基盤を整えることからサポートした。
 同級生に乱暴する小学生の男児もいた。背景を探ると、男児が母親からたたかれ、罵声を浴びせられていた。感情を抑えつけられているストレスと、母親から認められたい欲求や寂しさが同級生への乱暴につながったと考えられるという。
 SSWの女性は「問題の裏には子どものSOSが潜んでいる可能性が高い」と指摘。人付き合いが苦手で孤立を深めるケースもある。地域力の低下や貧困など現代社会のひずみも影響して問題は複雑化しており、学校や地域、SSWなど社会全体で子どもたちを見守る重要性を挙げる。
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 同市では2021年度、7人で市立小中などの70校を分担している。20年度の対応数は1068件で16年度の約7.4倍。段階的な人員増や定期的な学校巡回を始めたことで対応数が伸びた。
 ただ、問題も顕在化。その一つが勤務条件の不十分さ、身分の不安定さだ。待遇に県内自治体で大きな差はなく、県内のSSW約50人は非正規で年間の勤務時間に上限がある。だが課題解決までに長期間かかるケースもあり、1人で10校超を受け持ち情報収集することも。早期介入の大切さを実感しつつ、時間的制約が足かせになっているのが現状だ。
 「子どもの伴走者でありたい」とSSWの女性。子どもと十分に向き合い、無気力になっている子どもの可能性を引き出すためにも待遇の改善を望んでいる。


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