22年・年頭所感「掬川正純(ライオン社長)」より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する

LION

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。また、旧年中は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。

すでに世界は2年以上の長期にわたって新型コロナウィルス感染症に苦しめられています。このパンデミックがもたらしたのは、公衆衛生上の災厄だけではありません。人々の価値観や生活様式までが大きく変わってしまい、そして今も変化しつつあるのではないでしょうか。かつてない規模でのパラダイムシフトが進行中です。自らや家族の健康を日ごろから維持することの大切さは改めて強く認識され、家庭で家族とともに過ごす時間を大切にする意識も芽生えています。また、オンライン会議などデジタルツールの活用が急速に進む一方で、デジタルでは置き換えられないもの、リアルでのコミュニケーションの価値が再認識されました。

私たちライオンは、「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」ことをパーパスとしており、こうした変化には日ごろの「生活習慣づくり」の果たす役割が非常に大きいと信じています。昨年は、感染対策にも重要な口腔内の衛生状態維持に関するものなどの情報発信を強化するとともに、飛沫が気なる場面での「口閉じハミガキ」の方法なども提案させていただきました。在宅時間の増加に伴って高まる家事習慣へのこだわりに対しては、3年前に発売したルックプラスバスタブクレンジングに加えて、昨年はルックプラス泡ピタトイレ洗浄スプレーを発売し、家事習慣の負担軽減と質の向上への提案を行っています。今後とも、心と身体の健康維持に効果的な習慣づくりによって、生活者の意識変化に応えてまいります。

新型コロナウィルス感染症への対応と同じく極めて重要なテーマが、地球環境維持に向けた取り組みです。温室効果ガスの排出削減、海洋プラスチック汚染、いずれのテーマについても人類に残された時間は多くなく、国や企業は有効な対策を一刻も早く実施することが求められています。ライオンではこれらについても「生活習慣づくり」を通じて成果をあげることが最大の貢献につながると思っています。

温室効果ガスの排出削減では、日用品のライフサイクル全体でのCO2排出量の分析から、実にその2/3以上が家庭での商品の使用と廃棄で発生することがわかっています。なかでも使用時の水道水の利用によって生じるCO2排出がその約半分を占めます。節水型商品の開発と、それを使用した節水習慣の提案が重要な由縁です。今後とも当社はこうした活動に注力し生活習慣を通じたCO2排出削減に貢献してまいります。

もちろん、生産等の事業活動を通じたCO2排出削減にも前倒しで取り組んでまいります。ここでは使用電力の再エネ化や生産プロセスの省エネ化などの個別の取り組みに加えて、業界をあげた取り組みにも積極的に参加します。各社の物流データを集約したデジタルプラットフォーム(ロジスティクスEDI)の構築を主導し、高次の共同配送の実現など、物流効率化を通じたCO2排出削減など、業界全体での成果創出に貢献したいと考えています。

一方海洋プラスチックの問題解決については、排出量の削減とともに、効果的な回収・リサイクルシステムの構築が不可欠です。我が国の日用品業界は、早くから液体製品における詰め替え容器の普及を進め、多くの分野でその普及率は80%を超えています。このことはプラスチック使用量の削減に大きな効果をもたらしており、当社の例では、その削減効果は、製品の濃縮コンパクト化と合わせると、実に78%に達すると試算されます。まさに「詰め替え習慣」の浸透が大きな成果につながっていると言えます。

今後はこうした詰め替え容器を家庭から回収し、再利用するシステムの構築に取り組む必要があり、一昨年スタートした花王㈱様との共同検討など、業界を挙げた取り組みを進めてまいります。詰め替え容器はアジアの他の国々ではまだ10%以下の普及率です。こうした再利用のシステムを作り世界に向けて日本のサステナブル習慣を発信してまいります。

今年も昨年同様不透明な事業環境が続きますが、このような取り組みを一層加速していく所存です。旧年にも増して、一層のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、新しい年が皆さまにとりまして、ご多幸と繁栄の年となりますことをお祈り申し上げます。

掬川正純(代表取締役 社長執行役員)

© 国際商業出版株式会社