池江璃花子ら育てた名伯楽「水泳界支える」誇り 新天地は茅ケ崎、リオ五輪代表コーチ・村上さんの育成論

世界に羽ばたく選手を育てたいと意気込む村上さん=茅ケ崎市

 競泳界の名伯楽が湘南地域に根差したクラブから再出発した。リオデジャネイロ五輪代表コーチも務めた村上二美也さん(61)が新天地を求めたのは、神奈川県茅ケ崎市の林水泳教室。6月に執行役員ヘッドコーチに就任し、ジュニア育成に情熱を注いでいる。「日本の水泳界を支えているという誇りを持ってやっていきたい」。かつて池江璃花子(ルネサンス)らを育てた手腕を発揮し、世界へ導いていくつもりだ。

 師走の午後、25メートルの屋内プールには子どもたちのにぎやかな声が響いていた。就任から半年。活気に満ちた青き水面が村上さんの動力源だ。

 「最後のあがきじゃないけどもう一度、一から。大変なことだし時間もかかるけど、若いコーチ陣も前向きに取り組んでくれているのでやりがいもあって楽しい」

 華やかな世界を知っている。ルネサンスに勤務していた約10年前、日本水連主催のエリート小学生研修合宿で、当時小学6年だった池江と出会った。中学入学後、移籍してきたホープとともに2度の世界選手権やリオ五輪を戦い、指導者としてのキャリアを磨いた。

 還暦を迎え、「そのまま残って後進指導もと考えていた」というタイミングで人生の岐路が訪れた。

 長くジュニア育成に携わった知見とともに、水泳を通した人格形成にも重きを置いた指導が「地域に愛される、より価値の高いクラブづくりを目指す」という林水泳教室の狙いと合致。村上さんは「違う空気を入れてもう一度盛り上げたいということで、経験を少しでも生かせればありがたい」と決断した。

 資金力があり、充実した設備を備える大手には現状、及ばない。ただ、それが全てではない。

 「地元のクラブを拠点として五輪に出る選手もいる。中小は苦戦しているが志高いコーチの皆さんとともに努力していけば、まだまだいけるんじゃないか」。公共施設を活用したり、強化合宿に参加したり。創意工夫で補える。

 担うのは日本の水泳界を支える土台。「強いチームはどこにもいるが、そこを食うぐらいの勢いが出てくれば全国のトップに立ってくれる。一丸となって神奈川を制していきたい」。これから何人が大海へと飛び出すか。原石のきらめきに目を細めている。

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