**大晦日に縁起をかついで食べる年越しそば。
そばは他のめん類よりも切れやすいため、年越しそばには「一年間の苦労や災厄を断ち切る」という願いが込められているともいう。
日本三大秘境のひとつ、かずら橋や伝統的集落の点在する、徳島県三好市祖谷地方。ここはまた、昔から名だたるそばの里でもある。その祖谷そばの里で行う、地域コミュニティによる年越しそばづくりを紹介する。**
徳島県三好市祖谷地方 秘境の伝統食 祖谷そば
祖谷地方は急峻な山々に集落が点在する地域である。その環境のため、稲の水耕栽培は難しく、昔からそばの栽培がおこなわれ、大切にされてきた。そばを使った料理も、手打ちそば、そば練り、そば団子、そば米雑炊と様々である。
時代は変わり、米が主食である現在。しかし、祖谷地域のそばづくりは、代々受け継がれ、今なお地域の食文化の柱となっている。
奥祖谷で代々受け継がれるそば作り 祖谷育ち100%
三好市東祖谷久保地区。ここは奥祖谷と呼ばれるエリアでもさらに奥深いところにある地域だ。ここには、地域住民が一丸となって年越しそば作りを行っている「久保満月会」という団体がある。
12月に入り、年越しそば作りの準備を行っていると聞き、久保地区を訪ねてきた。
12月末の二日間 東祖谷の地域住民で行う年越しそば作り
この日は、団体の中心として活躍する岡本さんご夫婦と近所の方が、そばの粉ひきや干し大根づくりなどを忙しそうに行っていた。
目の前には大きな畑。祖谷の中でもこの畑は群を抜いて大きい。夏の種まき、秋の収穫、乾燥、脱穀。祖谷育ち100%のそば。そして他の祖谷の畑からとれたそばも、年越しそば作りのためにここに集められる。
「久保満月会」による年越しそば作りは、12月28日、29日の二日間行われる。この日のために、300kgものそばの実が使われたというから、その規模に驚きだ。
もともとは家庭料理だったが、その美味しさから口コミで広がった「幻の年越しそば」
もともとは何十年も続いていた、地域住民による久保地区の各家庭用とその親類に送るためだけの年越しそば作りだったという。しかし、その本物の祖谷そばの味は評判となり、今ではその味を求めて多くの注文が入るようになった。
宣伝も全くなし。すべて口コミのみでここまで大きくなったそうだ。そして今でも注文は、知り合い等を介して直接の注文のみ。
これはまさしく「幻の年越しそば」ではないだろうか。
パート2では、いよいよ年越しそば作り本番、当日の様子を紹介する。
>>徳島県三好市 奥祖谷で受け継がれる幻の年越しそばとは? パート2
祖谷そばが食べられるお店
旅の宿 奥祖谷
都築商店
峡谷の隠れ宿 祖谷美人
(取材・文: ショーン ラムジー)