藤沢市民会館の建て替えへ向け 市が基本構想

開館から半世紀以上が経過した藤沢市民会館

 藤沢市の文化芸術や市民活動の拠点施設で、開館から半世紀以上たつ「藤沢市民会館」(同市鵠沼東)の再整備を巡り、市が建て替えへ向けた基本構想をまとめた。市は新たな複合施設として2029年ごろの供用開始を目指している。しかし、市が進めている公共施設の複合化事業で最大規模の案件となるだけに、市議会側からは湘南エリアの顔となるホールの在り方などさまざまな注文が付いている。

 同会館は1968年、藤沢駅南口の商業地域に隣接する約1万8400平方メートルの敷地に開設。大ホール(1380席)や展示場、展示集会ホールを備え、音楽、演劇などの文化芸術活動の発表会やコンサート、成人式や市民活動の会合が開かれるなど、市中心部のランドマークとして市民に親しまれてきた。

 2021年11月25日の市議会特別委員会で報告された基本構想では、新たな施設の在り方について「人々が集い、奏で、響き合う、文化芸術の共創拠点」との基本理念を提示。拠点機能として▽文化芸術、知識との出会い▽みんなの居場所▽多機能の連携▽緑豊かで開かれた空間▽安全安心を支える-の5点を掲げた。

 複合化する具体的な機能として、市民会館や図書館、市民ギャラリー、市民活動推進センターなど10の施設を挙げた。その上で、同会館の周辺に位置する奥田公園(約1万6千平方メートル)や和洋折衷の代表的な近代建築物「旧近藤邸」(延べ床面積約170平方メートル)との融合、対象エリアの一体性を基本に、複合施設と中心市街地との連続性への配慮など四つのゾーニングのパターンを示した。

 同会館を巡り市は大規模改修と建て替えの双方を検討。2018年に「建て替えに優位性がある」とする結論が出されたが、新型コロナウイルスの影響で基本構想策定が1年先送りされていた。

 市が示した基本構想を巡り、特別委では「観光客や流入人口を呼び込む、稼げる施設として再整備すべき」「収益性を確保しなければ将来に借金が残り、持続可能な施設にはならない」などの意見が出た。藤沢駅に近接する好立地を生かした施設としての発想や視点が欠くとの指摘が相次いだ。

 今後、市はこうした意見を踏まえ、21年度中に基本構想を確定。22年度には基本計画に着手し、民間資金を活用した建設手法も視野に再整備を進めたい考えだ。しかし、市議会では湘南エリアを代表する文化芸術拠点の構築を求める声が根強く、曲折も予想される。

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