<社説>22県内経済展望 自立の手段は足元にある

 2022年も経済は視界不良が続きそうだ。 新型コロナウイルス感染症の流行による世界経済の停滞は、ワクチンの普及などにより回復に向かう兆しを見せている。一方で、コロナ下で落ち込んだ生産・供給体制が追いつかないことなどから原油や食品の価格が高騰し、家計を直撃する影響が出ている。

 年末には国内外で再び感染の広がりが見られた。感染防止の対策を緩めることはできず、海外との往来再開などは慎重な判断となる。沖縄経済も、コロナ前までの景気拡大を牽引(けんいん)してきた観光を中心に試練が続く。雇用や家計に対する公的支援を継続し、経済を下支えする必要がある。

 そうしたコロナ禍の中で、沖縄は日本復帰から50年の節目を迎えた。新たな沖縄振興特別措置法や沖縄振興計画の下での展開が22年度からスタートすることになる。多くの困難が立ちふさがる今こそ足元の経済を見つめ直し、自立を阻害してきた要因を克服する契機としたい。

 半世紀にわたる沖縄振興だが、大型事業の多くを県外の大手ゼネコンやコンサルティング業者が受注し、地元に歩留まりが少ない「ザル経済」が指摘されてきた。

 宮田裕沖縄大・沖縄国際大特別研究員によると、11~19年度に沖縄総合事務局が発注した公共工事契約額のうち、約45%に当たる1951億4600万円を県外企業が受注していた。復帰から20年度までの沖縄関係予算の累計は13.1兆円に上るが、相当な額が地元に落ちず、本土へ環流してしまう構造がある。

 民間の製造企業は、本土や海外からの移輸入品に押され続けてきた。県工業連合会と琉球大の調査によると、県内製造業の自給率(2011年)は32.1%にとどまる。この自給率を3ポイント伸ばすだけで、509億1100万円の経済波及効果を生み出し、5556人の雇用を誘発するという。6ポイント上昇した時は1101億1800万円の経済波及効果、1万2017人の雇用を創出すると試算する。

 県内の消費者が地元でつくられた農産物や製品を優先的に購買することは、コロナ禍で傷つく県経済の支えになるだけでなく、資本を域内循環させて沖縄の産業基盤を強くすることにつながる。

 復帰以降、米占領下で立ち遅れた生活水準の向上や産業基盤整備のため、山野を切り開き海岸線の埋め立てが進められてきた。これからは独自の自然や生態系を守り、沖縄らしい景観を受け継ぐことが、世界的に認められる沖縄の価値を高め、経済を形作る基盤となる。昨年の世界自然遺産登録は追い風だ。

 固有の風土に根ざした伝統工芸やデザインも県民自身が愛用し、時代に合わせ洗練させることで、外貨を稼ぐ強みのある産業に発展し得る。自立の手段は既に足元にある。沖縄の豊かさを再確認し、内需を高める年にしたい。

© 株式会社琉球新報社