神奈川の地方議会、産休期間明記が9割に 女性の政治参加促進 「標準会議規則」改正が波及

ベビーベッドなどが設置された親子傍聴室=横浜市会

 女性の政治参加を促そうと、全国各地で規則に産休期間を盛り込む地方議会が増える中、神奈川県内でも県を含む34自治体のうち31自治体の議会で、規則に労働基準法と同等の「産前6週、産後8週」以上の産休期間を2021年に明記していたことが、神奈川新聞社の調査で分かった。それまで明文化していた議会はゼロだったが、地方3議長会が「標準会議規則」を改正したことで動き始めた。

 議会の会議規則を巡っては、21年1~2月に全国の都道府県議会と市議会、町村議会の各議長会が議会運営の基準となる「標準会議規則」を改正。多様な人材の参画促進を目的に、産休期間のほか、欠席事由として「育児」や「介護」などを明文化した。標準会議規則自体に拘束力はないが、各議会の規則のひな型となるもので、県内自治体の9割に波及した形となる。

◆改正検討する自治体も

 神奈川新聞社が調査した同年12月時点で議会規則に労基法と同等以上の産休期間を明記していたのは31自治体あり、その全てで欠席事由に「育児」「介護」を明記。中でも川崎、相模原、小田原、南足柄市、開成町は労基法の期間を上回る「産前8週、産後8週」、山北町は「産前7週、産後8週」としていた。

 一方、産休期間を明記していない3自治体のうち、平塚市議会は改正を検討しているといい、座間市議会は「現行規則でも運用上認められる」と説明。真鶴町議会では特に見直しの議論は行われていないという。

◆産休を取得した事例は

 内閣府の発表によると、同年7月時点で労基法の産休に相当する期間を明記している地方議会の割合は65%で、欠席事由に「育児」「介護」を明記している議会はそれぞれ62%だった。県内は12月時点でいずれも91%となっており、女性の政治参画に詳しい上智大の三浦まり教授(政治学)は「これから妊娠・出産する可能性のある女性が安心して地方議員を目指せるようになる」と評価する。

 ただ今回の調査では、長年多様性に欠けてきた議会の実態も浮かび上がった。議員数に占める女性の割合は増加傾向にあるものの、12月現在の県内平均は23%。過去に議員が産休を取得した事例があるかどうか尋ねたが、明確に確認できたのは横浜、横須賀、鎌倉、大和市、松田町の5自治体にとどまった。一方、「過去に事例はない」「記録はないがこれまで一度もないとみられる」と答えたのは20自治体に上った。

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