ロサリオ、アルカンタラ…韓国経由の助っ人が日本で苦しむ理由を“名将”が分析

元阪神のウィリン・ロサリオ(左)と阪神のラウル・アルカンタラ【写真:荒川祐史】

ソフトバンクでアドバイザーを務める金星根氏は韓国プロを代表する名将

韓国プロ野球KBOリーグでの活躍を評価されて日本球界にやって来る外国人選手は多い。昨オフは阪神にラウル・アルカンタラ投手、メル・ロハス・ジュニア外野手が入団。このオフもLGツインズからヤクルトにアンドリュー・スアレス投手がやって来る。ただ彼らが活躍する可能性は、高いとは言えないのが現状だ。KBOリーグで監督として史上2位となる1388勝を挙げ、現在はソフトバンクのアドバイザーを務める金星根(キム・ソングン)氏が、韓国紙・スポーツ京郷の記事でその原因を分析している。

「金星根の韓日野球評価書 同じ外国人が違う成績を残す『近くて遠いリーグ』」と題されたこの記事で真っ先に触れられているのは、阪神のアルカンタラだ。韓国では2年間プレー。特に2020年は斗山ベアーズで20勝2敗、防御率2.54という好成績を残し阪神入りした。ただ昨季は先発の地位を固めることが出来ず、3勝3敗、防御率3.49に終わった。

この“落差”について金星根氏は「韓国と日本の打者には選球眼の差がある。韓国の打者は速球と落ちるボールに弱く、簡単に騙される傾向があるが、日本の打者は同じボールを“選ぶ”」とした。さらに「日本では低めのストライクゾーンが“辛い”傾向があり、韓国では取ってくれた低めがボールになったため、高くなったボールを打たれる傾向があった」と分析している。

記事ではさらに「アルカンタラの不振は特別なことではない。韓国での成功を踏まえて日本に渡った外国人選手のうち、8~9割は成績が落ちる」とまで指摘している。

ロサリオが失敗し、ウッズが大成功できた理由とは?

打者も同じだ。2018年に阪神でプレーしたウィリン・ロサリオもその例にもれなかった。大リーグ通算71発、さらに2016年からの2年間は韓国・ハンファで通算打率.330、70本塁打を記録した。ただ2018年に在籍した阪神では75試合で打率.242、8本塁打に終わっている。ハンファ時代には、金星根監督の元でプレーした選手でもある。

記事は、右打者のロサリオは外へ逃げるボールに弱点があった。ただ韓国では外角のボールを待って、中へ入ってくるボールを打てていたと指摘する。ここで明らかになるのは、両国リーグのストライクゾーンの違いだ。

金星根氏は「日本ではロサリオに外へのボールを追いかけさせた後、逆に内角へ厳しいボールで攻めるという勝負を見ることが多かった。両サイドの活用に違いがある」と分析している。

両国で成功した選手がいないわけではない。投手で言えばサムスンからソフトバンクへ移籍したリック・バンデンハーク、打者では斗山から横浜、中日でプレーしたタイロン・ウッズが代表的だ。ウッズは大リーグ歴がなかったものの、韓国・OBベアーズへ移籍した1998年に当時のリーグ記録となるシーズン42本塁打、2003年に横浜へ移籍すると2年連続本塁打王となった。日本では通算6年プレーし240発。両国で成功を収めた数少ない例だ。

記事で金星根氏は「ウッズはホームランバッターなのに、流し打ちが可能な打者だった」と、引っ張り専門ではなかったことが成功の理由だと指摘。さらに「前へ出て打つタイプの打者は、日本では大半が失敗する」としている。ウッズのようにしっかりボールを引き付けて打つタイプの打者でないと、成功は難しいと考えているようだ。

さらに、同じ外国人が日韓両国で全く違った成績に終わる理由は、両国のレベル差にあるとしている。「日本では球速150キロを超えるのも普通だ。球速と球種、変化球の鋭さでは日本の投手が先を行っている。韓国の投手はストライクを入れられる制球力まではあるが、打者と勝負する際に特定のコースを攻めるコントロールがまだない」。今後も続くであろう助っ人の行き来。再びの成功例は現れるだろうか。(Full-Count編集部)

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