ハウステンボス30周年 危機越え成長「感謝」の年 知恵生かし改善、挑戦続く

ハウステンボス30年の歩み

 長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)は3月25日、開業30周年を迎える。経営難などいくつもの危機を乗り越えながら、多くの人々に愛されるテーマパークへと成長してきた。新型コロナウイルスの影響が続く中、30周年のテーマに掲げた「感謝」を伝える1年が始まった。

■ V字回復

 HTBは、県が造成した旧針尾工業団地(総面積152ヘクタール)の広大な敷地に、2千億円超を投じて開発された。創業者は旧長崎オランダ村などを手掛けた故・神近義邦氏。1992年3月25日にオープンし、中世オランダの街並みや美しい花々が来場者を魅了した。
 しかし、開業前のバブル崩壊の影響もあり、赤字経営が続いた。2003年には会社更生法の適用を申請。負債総額は2289億円に上った。その後、野村プリンシパル・ファイナンスの支援を受けたが業績は回復せず、09年には経営問題が再び明るみに。10年2月、エイチ・アイ・エス(HIS)による支援が決定し、同社創業者の澤田秀雄氏がHTBの社長に就任した。
 澤田氏は徹底した経費削減の一方、イルミネーションによる「光の王国」や歌劇団、ロボットが接客する「変なホテル」など、次々とアイデアを形にして成功に導いた。HTBは生まれ変わり、業績はV字回復を遂げた。

■ 赤字転落

 19年5月、経営再建を果たした澤田氏は社長を退任。最高人事責任者だった坂口克彦氏が、新社長に就任した。
 坂口社長は、澤田氏の「カリスマ経営」から、現場の知恵を生かす「組織経営」への転換を掲げた。多くの社員と面談をした上で、まず着手したのが「パスポート革命」。当時は入場の際にパスポートを購入しても、アトラクションで追加料金がかかっていた。そのことに納得がいかず、自信を持って働けない従業員がいることを知り、追加料金を廃止。それ以降、アトラクション利用者が増えた。
 来場者の声を聞いて園内の設備などを改善する取り組みも始めた。改革は一歩ずつ進んでいたが、誰も予想できなかった危機に直面した。新型コロナウイルスのまん延だ。入場者数は大きく落ち込み、20年9月期連結決算は、HIS傘下となって以降、初めて赤字に転落した。

■ 基盤強化

 苦境に陥る中、坂口社長は経営基盤の強化に取り組んだ。自ら講師を務め、係長以上の社員を対象にマネジメント研修を実施。納得して仕事をすることの大切さを共有した。組織経営への移行は着実に進み、現場からどんどん知恵が出てくるようになった。接客のレベルも大きく向上した。
 来場者により快適に過ごしてもらおうと、園内の環境改善にも取り組んだ。ベビーカーや車いすを押しにくいと指摘されていた石畳の一部を、でこぼこが少ないれんが敷きに改修。高齢者らが広い園内を散策しやすいように電動車いすを導入した。
 季節のイベントも強化した。フラワーフェスティバルや夏祭り、ハロウィーン、クリスマスなど、約2カ月ごとにテーマを設定。レストランで限定メニューを出すなど、園内全体でその季節の魅力を楽しめるように工夫した。

30周年のロゴ(ハウステンボス提供)

 こうした取り組みが奏功し、3年以内の来場者を対象にした21年7月の調査では、満足度が2年連続で上昇した。坂口社長は「お客さまの評価は非常に上がっている。基盤強化は相当できた」と自信をのぞかせる。
 コロナ禍で落ち込んだ業績の回復、そして来場者のさらなる満足度向上へ-。HTBの挑戦は続く。


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