「1球待て」は少年野球に必要か? シニア日本一監督が説く“未来を見据えた指導”

取手リトルシニア・石崎学監督が少年野球の指導者に感じている疑問

取手シニアの石崎監督の指導は「1球待て」の癖を直すところから始まる

茨城県取手市で活動する取手リトルシニアは、昨年3月に行われた「第27回日本リトルシニア全国選抜大会」で優勝し、3度目の日本一を手にした名門チーム。First-Pitch編集部の指導をテーマにした連載「ひきだすヒミツ」では、石崎学監督が少年野球の指導者に感じている疑問を掘り下げる。

今年で創部15年目を迎える取手リトルシニアは、ソフトバンクの柳町達外野手らプロ野球選手も輩出している。監督を務める石崎学氏の指導は、少年野球チームから入団する選手たちのある“習性”を治すところから始まるという。

「2ボールから振らない。ましてや、カウント3ボール1ストライクから振らない。『振れよ!』って思うんですよね」

少年野球によくある「1球待て」。さらには、体が小さいからとセーフティバントのみをやらせたり、失策を狙ってゴロを打たせたりなどもある。理由は様々だが、石崎監督は「何も起こらない」と一蹴する。

「少年野球でゴロを打てば、確かに塁に出ることができるかもしれない。でも、高校野球でゴロを打っても、何も起こらないじゃないですか」

技術や体が成長するとともに、ゴロはヒットになりにくくなり、投手の球速も制球力も上がる。そのため、「1球待て」と「ゴロを打て」というのは、先々のステージでは重要な要素ではないと考える。

茨城県の中学硬式野球チーム・取手リトルシニア【写真提供:取手リトルシニア】

結果よりも将来見据えた指導を「中学野球や少年野球で勝っても監督の名声ない」

高校野球の夏の甲子園で優勝すれば、一躍時の人。何度も出場して結果を残した監督は“名将”と呼ばれ、世間一般にも知れ渡る。その一方で、中学野球で結果を残しても全国区にはなりにくい。「中学野球や少年野球で勝っても、監督の名声なんて何もない。内輪だけの自己満でしかないんです」。結果よりも将来の活躍を見据えた指導が、少年野球のあるべき姿だと考える。

石崎監督自身も、たとえ3球三振でもいいから、初球から振ることを選ばせるケースが多い。試合展開や場面にもよるが、初球から振った方が、勝つ可能性が高まると考える。

投手に有利なカウントになるほど、投球は厳しくなる。プロ野球でも、ほとんどの打者がストライクカウントが増えるごとに打率は下がる。「単純に確率が高い方を選べば、勝つ確率が高いですから」。子どもの将来を考えてもう一度、少年野球の“常識”を見つめ直す必要があるのかもしれない。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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