“公務パワハラ列島”と化した行政職場 懲戒処分などのニュース途切れず

 公務職場でのパワハラに関するニュースが続いている。昨年(2021年)10〜12月の3カ月に限っても、相当数の報道がなされた。「公務パワハラ列島」とでも呼びたくなる状況だ。地方で起きている「公務パワハラ」の主なニュースを眺めた(警察と自衛隊を除く)。実際に懲戒処分が行われたり、内部調査が始まったケースに限っている。

◆1時間以上「ばか」などの暴言を連発、「殺すぞ」も

【北海道】道立高等看護学院では学生らが教師のパワハラを訴え、それを調査していた第三者委員会の結論がまとまった。調査対象のパワハラは実に101件に達し、江差校で34件、紋別校で18件、計52件が最終的にパワハラと認定された。関与した教員は11人を数えた。

道立高等看護学院では、複数の学生が教師からの暴言が原因で休学や退学に追い込まれたなどと訴えており、第三者調査委座長の弁護士は「学生を育てる教育機関としての意識の希薄さ。副学院長に事実上権限が集中している部分で独善的な運営があったのではないか」と語った。(北海道テレビ、10月13日)

【横浜市】横浜市消防局の男性消防士長が、指導と称して蹴るなど複数の職員に対してパワハラ行為をしたとして停職4カ月の懲戒処分を受けた。2021年4〜8月、若手職員4人を蹴り、たたき、無視するなどしていたという。(神奈川新聞、10月29日)

【長崎県】部下にパワーハラスメント行為を繰り返したとして、長崎県に勤務する課長補佐級の男性職員が停職1カ月の懲戒処分を受けた。この職員は2021年4〜5月、毎日のように、部下に「ばかじゃないのか」などと大声を出し、高圧的な言動を繰り返した。長いときは1時間以上に及んだ。また、書類を見ながら「殺すぞ」「ばか」などと独り言をつぶやき、周囲を萎縮させていたという。被害を受けた部下は適応障害と診断され、病気休暇を取得した。(長崎新聞、11月5日)

◆市長のパワハラで「生きる希望を失いつつある」

【熊本県菊池市】50代の男性課長が「江頭実市長からパワハラを受けた」と実名で市の窓口に文書を提出し、市が内規に基づいて調査を始めた。男性は「数年前から、優越的な地位にある市長から度重なる叱責や嫌がらせを受けていた。睡眠障害を発症し、生きる希望を失いつつある。別の職員もパワハラを受けている」などと主張しているという。また、その後、市長による別のパワハラ案件も浮上している。(熊本日日新聞、11月17日)

【滋賀県】滋賀県教育委員会が県内公立学校のハラスメント被害の実態調査を受け、パワハラと認定した4人の管理職を厳重注意にした。この調査は2020年11~12月に教職員1万3973人を対象に実施され、回答者8087人のうち、16.5%に当たる1337人がパワハラやセクハラなどの被害に遭ったと申告していたという。(京都新聞、12月1日)

【千葉県君津市】男性係長が部下に対し、「具体的な改善点を示さず、付せんによる書き直し指示や人格を傷つける発言」を続けるなど、精神的な苦痛を与える不適切な言動があったという。この部下は約8カ月の病気休職を余儀なくされ、係長は停職1カ月の懲戒処分となった。(千葉日報、12月25日)

イメージ

◆神奈川県大和市でも市長のパワハラ、市長室で暴言か

【神奈川県大和市】大木哲市長による職員へのパワハラが繰り返されていたと、元副市長(任期途中辞任)が2021年春に告発した。その後、市議会が実態把握に向けて課長・部長らを対象に無記名アンケートを実施。134人のうち103人が答えた結果が公表された。

それによると、「市長によるパワハラと捉えられる言動を直接受けた、もしくは見聞きしたことがあるか」との設問に、19人が「ある(被害を受けた)」と答えた。「見聞きした」は42人。合わせると全体の59%に達した。「大声で叱責したり、激しく恫喝する」「言うことをきかないと降格を示唆」「理不尽な理由で反省文を書かせる」などが回答に記載され、精神疾患になって休職した事例もあった。こうしたパワハラ行為は市長室や幹部会議の席で常態的に起きている、という元副市長の告発を裏付ける内容だったという。(神奈川新聞、12月28日)

ここに選んだ記事は、この3カ月間の一例に過ぎない。パワハラやその処分に関する記事は、地方紙や全国紙の地方面で小さな記事にしかならないケースも少なくない。テレビの報道もローカル枠にとどまるケースがほとんどだ。新聞社・放送局は全てのニュースをネットで公開しているわけではなく、実際に報道されたパワハラ関連記事を網羅的に捕捉することは、かなり難しい。警察や行政と密接に関係する社会福祉協議会や観光協会なども含めると、懲戒などに至った実例は相当数に達するだろう。

■参考URL
『「大人のいじめ」を根絶せよ! 職場でのいじめ・パワハラ根絶に挑戦するNPO法人「POSSE」理事・坂倉昇平さん』(フロントラインプレス・本間誠也)
『官製ワーキングプアの真実【上】「公務職場は非正規女性の“善意”でぎりぎり維持されている」』(フロントラインプレス・本間誠也)
『「都合の悪いことは無かったことに」 消防で相次ぐパワハラ、命懸けの告発でも変わらないのか』(共同通信)

© FRONTLINE PRESS合同会社