いつもと違う「W杯イヤー」

1月末からの2連戦で状況が変わる

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サッカーW杯最終予選 日本―オマーン 前半、指示を出す森保監督=マスカット(共同)

 注目の本大会の組み合わせは、いつもなら年末だ。W杯が行われる年の正月は、半年後に迫った4年に一度の祭りに思いをはせて心が浮き浮きしていた気がする。しかし、今年は違う。カタールでW杯が開幕するのは1年近く先の11月だ。組み合わせ以前に、まだ出場国が出そろっていない。日本にしても、カタールに行ける確約をもらっているわけではない。だから気持ちの中で、W杯という楽しみが膨らんでいく状態ではない。

 1月27日からW杯アジア最終予選が再開する。日本は1月27日の中国戦、2月1日のサウジアラビア戦とホームでの2連戦で勝ち点6を得れば、状況はかなり明るくなる。逆に勝ち点を失うことになれば、3月24日にオーストラリアで行われるアウェーでの試合は、再び大きなプレッシャーを背負いながらの戦いになりそうだ。

 日本代表に名を連ねる選手の多くが欧州でプレーする現在、日本代表のグループとしての総戦力は、間違いなく史上最高だろう。ただし、ピッチで同時にプレーできる人数は11人。その11人の合計戦力が史上最高かというと、必ずしもそうは言えないのではないだろうか。

 確かに個々の選手の能力は上がっている。ただ、個々の高い能力がチームとしてかみ合っているかというと疑問符が付く。それは最終予選6試合で5点しか挙げていないという貧攻にも表れている。チームとしての成熟がなされなければ、将来は暗い。良い食材がそろっているのに、料理がまずいというのが一番もったいない。ここからはシェフである森保一監督の手腕に期待するしかない。

 過去のアジア予選を振り返ると、日本代表は年明けの試合に苦戦する印象がある。Jリーグの選手は試合勘が戻っていないからだ。一方で欧州組はシーズン途中なので実戦の感覚には問題はないのだが、移動による時差の関係でコンディションにばらつきが出てくる。欧州の高いレベルでプレーする選手が増えたことは喜ばしいのだが、日本で試合をしてもコンディション面では常にアウェー状態にあるのが、今の日本代表なのだ。

 森保監督にとって、1月末からの2連戦は対戦カードの順番に恵まれた感じがする。ブラジル出身の選手がチームを離脱した中国は、明らかに日本に比べれば格下だ。もちろん油断は禁物なのだが、コンディションが万全ではなくても中国を相手に勝ち点を落とす可能性は低い。

 その5日後にグループ首位のサウジアラビアを迎えるわけだが、サウジアラビアはホームで戦ってからの日本への移動。しかも暖かい場所から真冬の日本に来るわけだから、日本はコンディション面でも気候面でもホームの利を生かせる。新型コロナの状況によって1月末の状況は不透明ではあるが、これで多くの観衆が入れば言うことはない。

 アジア予選は勝ち抜けば、それでいい。残り4試合。ライバルのサウジアラビア、オーストラリアとの試合が含まれる中で、予選突破を果たすと同時に、本大会をにらんでチーム力を高める要素までも加えることは難しいだろう。アジア予選と本大会、この二つを別物として割り切る必要もある。たとえ、ホームであっても移動によるコンディション調整の難しいアジア予選。森保監督のチームは、それよりも十分な準備のできる本大会の方が強いチームをつくりやすいのではないだろうか。

 森保監督は、変化をあまり好まない監督だ。だから予選残り4試合で冒険はしないだろう。ただ、出場を決めて本大会に向かうとき、使える武器はすべて使うはずだ。予定通り試合ができれば、アジア予選が終了するのは3月29日。そこから本大会まで7カ月以上の時間がある。テストするチャンスは、過去の大会以上に多いはずだ。特に攻撃に関しては、誰もが改善しなければと思っている問題点だろう。

 最終予選ではまだ1試合しか先発していない古橋亨梧。セルティックであれだけゴールを量産しているストライカーをサイドではなく中央で使ってみたい。そう思っているのは、ほかならぬ森保監督かもしれない。また、昨季、ベルギーのシントトロイデンで17ゴールを挙げながらも鈴木優磨は代表に縁がなかった。鹿島アントラーズに2年半ぶりに電撃復帰した万能型のストライカーも、多くの人が見てみたい選手の一人なのではないだろうか。

 W杯の行われるシーズンは、サッカー選手にとっても人生を分ける1年になる。昨季23ゴールを挙げJリーグ得点王に輝いた横浜F・マリノスの前田大然。川崎フロンターレのリーグ連覇の原動力となり、ベストイレブンにも選出された旗手怜央。さらにガンバ大阪の井手口陽介。代表経験のある若い3人が、そろってセルティックに移籍するという。欧州に移籍すれば成長が保証されるものではない。ただ、厳しい環境で競争を勝ち抜けば、日本代表の戦力の選択肢を増やすことになる。彼らには、ぜひ成功してもらいたい。

 本大会を語るには、まだ気が早いか。鍵となるのは1月末からの2連戦。ここを乗り切ったならば、頭を少し「W杯モード」に切り替えていってもいいのかもしれない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材は2018年ロシア大会で7大会目。