ワクチン副反応「異変には国のサポートを」 長崎大大学院・森内浩幸教授インタビュー

 新型コロナウイルスワクチンの副反応について長崎大大学院教授でワクチンに詳しい森内浩幸氏に聞いた。

新型コロナウイルスワクチンの副反応などについて話す森内教授=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

 -今回の女性のように副反応疑いとして国に報告されても「評価不能」となるケースが相当数ある。

 接種部位が痛いとか、接種直後にアナフィラキシー(強いアレルギー反応)が起きたとか、若い人で心筋炎になったとか明らかな副反応以外、ワクチン接種によるものか、あるいは他に原因があるのかの区別はほぼ不可能だ。
 日本では副反応という言葉しか使わないが、海外では副反応と有害事象を使い分けている。海外で有害事象として扱っているものが、日本では副反応疑いになっている。ワクチン接種後に起きた不都合なこと、例えば「ぼーっとしていて転んだ」とかも、有害事象として届けることになっている。何の関係もないと思うようなことでも接種から一定期間内に起きたことは情報を上げる仕組みになっている。でも日本は副反応疑いとして届ける。さらに日本は医療機関が情報を上げるが、米国は個人で届けてもいい。こうした違いがあるのが事実だ。

 -情報を広く集めることのメリットは。

 今の医学の常識では関係ないと思われていることでも、多くの情報が集まることで「もしかしたらワクチン接種の影響かも」と気付かれることがある。一定の数が集まったところで解析し、まれではあるが、副反応だろうということになっていく。日本はその仕組みがないから門前払いしたように思われてしまうことがある。「副反応じゃないだろう」と思ってしまうと、そこで止まってしまう。たまたま「紛れ込み」として起こってしまったことの方が圧倒的に多いが、接種のタイミングと一緒に起きればワクチンが原因と思うのが人情だ。
 (明白な副反応以外)ワクチンとの因果関係は分からないとしか言えない。ただ「違うさ」と否定することでもなければ、「ワクチンのせいだ」と決め付けることでもない。(今回のケースで言えば)「原因不明のまひ」は現時点ではワクチンとの関連が疑われている症例としては報告が上がっていない。でもそれは違うということでもない。ものすごくまれだけどワクチンによってそういうことが起こる可能性はある。

 -評価不能とされるケースでも仕事ができなくなり、経済的に困窮したり、治療費がかさんだりすることもあると思うが、今の制度では救済されない。

 国はワクチン接種を「努力義務」と位置付けて推奨してきた。何でもかんでも(補償する)というのは難しいと思うが、今回の女性のようにワクチン接種直後から異変が起き、あらゆる検査をしてもほかに原因が見当たらず、時系列的に見てワクチンとの関連性を否定できない場合がある。そういうケースは少しでも国がサポートする。それは公明正大にやっていく、何かあったときにはきちんと補償するという姿勢を示す意味でも大切なことだ。

 -今回のケースは接種直後から体調に異変を感じ、複数の医療機関でさまざまな診察や検査を受けても原因が分からず、治癒もしていない。「たらい回し」にも見えるが。

 本人にすれば「たらい回し」という感覚もあるかもしれないが、さまざまな診察や検査を通じ、原因を特定しようとする行為は必要。解明が難しい場合は、より検査体制が整っていたり、専門的な医師がいたりする医療機関を紹介してもらうことが重要だ。場合によっては専門的なチームを作って対応することで改善に向かう場合もあると思う。

 -厚生労働省は副反応を疑う事例を収集し、評価、結果を公表している。死亡例も多く、県内では昨年11月30日時点で17の死亡例も報告されている。

 日本では年間に百三十数万人が亡くなってる。このうち1~2割は「普通に健康だったのに」という人がくも膜下出血や心筋梗塞などで亡くなっている。こうした統計から考えると因果関係は分からないが、接種後の間もない時期に亡くなる方は一定数いるはず。ゼロというのは逆に不自然ということにもなる。


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