体がけいれん、筋力低下…これはワクチン副反応? 接種後の“異変”に苦しむ女性の訴え

勤務先の病院で新型コロナウイルスワクチンを接種したハルミさん。原因不明の症状でつえが手放せなくなった=東彼波佐見町

 昨年3月、病院事務として働くハルミ(仮名、30代)=長崎県東彼波佐見町在住=の職場に、新型コロナワクチンの接種希望を募る名簿が回ってきた。医療従事者を対象に県内でのワクチン接種が始まったばかり。まだ情報が少なく、漠然と不安もあったが、申し込んだ。事務員でも日常的に患者と接する機会はある。「受けない」と言いにくい雰囲気を感じた。
 接種直前まで迷ったが、「今キャンセルすれば多くの人に迷惑を掛ける」と思い直した。接種後、座って待機していると急に全身が熱くなり、意識がもうろうとした。すぐに収まったが、気分はすぐれない。帰宅後も全身がだるく、吐き気と左背部の痛みに襲われた。翌日、職場の病院を受診。医師には「副反応だろうが、対症療法しかない」と薬を処方された。
 2日後、会話していた夫に「口の動きが変だ」と指摘された。鏡で自分の顔を見ると、左側だけ口角が下がっていた。「やっぱりおかしい」。再び病院を受診したが、原因は分からないままだった。

 新型コロナウイルスのワクチンには発症や重症化を抑える効果がある一方、一部、副反応と思われる症状が現れる人もいる。接種直後から“異変”に苦しむ県内の女性の姿や、専門家の見解、副反応の相談・医療体制を取材した。

 ■接種後に原因不明の症状 救済諦め苦悩
  
 東彼波佐見町在住の病院事務、ハルミ(仮名、30代)は昨年3月、新型コロナウイルスワクチンを接種して以降、体の不調が続いていた。口の筋肉に違和感があり、再度職場の病院で受診したが、原因は分からず、ビタミン剤を服用するしかなかった。その後、手や足など体中のあちこちがけいれんするようになった。
 体調が戻らないまま、2週間近くが過ぎた。いつものように出勤すると、足に異変を感じた。思うように力が入らず、2階の職場に続く階段を上るのが異常にきつい。何とか2階にたどり着き、いすに座ると足がガクガクと震えた。それ以上、歩くことができなくなり、そのまま入院した。
 ギラン・バレー症候群を疑われたが検査は陰性。他の検査でも異常は見つからなかった。医師はワクチンの影響を否定し「疲労だから数週間すれば治る」と言い切った。接種前まで持病もなく、健康だったのに-。「あなた痩せすぎだから。ちゃんと食べてる?」と聞かれ、不信感が募った。有効な検査や治療もないまま、2週間ほどで退院。病名も付かず、診断書には「両下肢脱力」と症状だけが書かれた。
 だが数カ月たっても一向に回復しない。6月に一度職場に復帰したが、指の震えや足の脱力などの症状が出て、4日で再び休職することになった。朝に体調が良くても、動き過ぎると夜には寝込んでしまう。いつ症状が現れるか分からないため、転倒防止のつえが手放せなくなった。夏になっても治らず、医師に「ワクチンが原因ですよね」とあらためて尋ねると、今度は否定せず「これからこの症状と付き合っていくしかない」と軽い調子で言われ、失望した。
 副反応の疑いがある症状は病院を通じて厚生労働省に報告された。ハルミは同省のサイトに公開されている膨大なリストから、何日もかけて、ようやく自分の接種券と一致する事例を見つけた。結果は「評価不能」。病院にカルテを開示してもらったり、医師に受診証明書を書いてもらったりと時間や費用もかけて申請しても、国に認められなければ、医療費給付などの救済は受けられない。「望みは薄い」と諦めた。現在は医療従事者に適用される労災補償の申請準備を進めている。
 体験を周囲に話してもなかなか信じてもらえず、ワクチンの副反応については話題にしにくい雰囲気を感じる。だが自分の症状や経過を会員制交流サイト(SNS)に書き込むと、同じような境遇の人から多数の反応があった。
 接種後、子どもたちと遠くに遊びに行くこともできなくなった。職場や家族に迷惑をかけていると思うとつらい。「メディアがワクチンのメリットばかりを発信し、実際にある副反応への対策や情報発信をしないのはフェアじゃない。私よりも重篤な症状に苦しんでいる人もいる。3回目接種や子どもたちへの接種が進められているが、接種のリスクを知った上で検討してほしい」と訴える。=敬称略=


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