末期がん患者「在宅」終末期生存長く

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在宅復帰する患者のケアについて、モニター画面(正面奥)の開業医と話し合う病院スタッフら。両者の連携による在宅医療充実が余命延長の要因になったとされる=厚生連高岡病院

■厚生連高岡病院が調査

 末期がんで入院した患者のうち在宅復帰した人は入院を継続した人より終末期の生存期間が長いことが、厚生連高岡病院研究チームの調査で分かった。在宅の緩和ケア技術の向上に加え、家族らとの触れ合いを通じて得られる心の安らぎが、命に好影響をもたらしたとみられる。チーム関係者は、在宅医療の安心感アップへの波及効果を期待している。(宮田求)

 この調査は、2016~20年に厚生連高岡病院緩和ケア病棟に入院した末期がん患者のうち、256人を対象に実施。1日でも在宅復帰した患者と入院を継続した患者の二つのグループで、がんの種別や症状の重さなど余命に関わる条件を一致させつつ、入院開始から亡くなるまでの期間の中央値を導き出した。結果は在宅復帰グループが57日間、入院継続グループが27日間。「在宅復帰」が2倍以上の長さだった。

 同病院緩和ケアセンターの村上望センター長は「開業医らの緩和ケア技術向上や病院の継続的なサポートにより、在宅で病院とほぼ同程度のケアが提供できるようになったことが背景にある」と分析。その上で「自宅で自分らしく『人生の最終章』を過ごすことが、生命にポジティブな影響を与えたのではないか」とみる。

 多くのがん患者を在宅で診ている射水市大門、のざわクリニックの野澤寛院長も「家族との触れ合いによって薬以外の効能が期待できる自宅こそ緩和ケアにふさわしい場だ」と強調する。

 実際、同病院緩和ケア病棟を退院した40代女性が余命わずかと診断されながら、在宅生活を織り交ぜて2年近く生きたケースもある。その女性の家族は「病院食では出ないすしを味わうことなどを楽しみにし、再入院した時も『また自宅で過ごしたい』という思いが生きる気力につながっていた」と振り返る。

 厚生労働省によると、末期がんと診断された場合も自宅で過ごしたいと望む国民は47%に上るのに対し、実際に自宅で亡くなるがん患者の割合は17%。願望と現実とのギャップ解消が課題となる中、村上センター長は「今回の調査結果が在宅医療への安心感を高め、患者の願いを後押しすることにつながればいい」と望む。

 調査には、緩和ケア分野で国内トップレベルの県外医療者や富山大付属病院研究者らも加わっている。論文にまとめ、国内外の専門家の査読(評価・検証)を経て英文の医学雑誌への掲載を目指す。