最も伸びる時期は「引退後」 全国制覇3度のシニアが取り組む“数値”に拘る指導とは

茨城県の中学硬式野球チーム・取手リトルシニア【写真提供:取手リトルシニア】

取手シニアでは、練習試合では平等に選手を出場させる

中学の強豪チームはどういうところに主眼を置いて練習しているのでしょうか。First-Pitch編集部では、少年野球の指導のヒントになる考え方を紹介する「ひきだすヒミツ」を連載しています。今回は全国制覇3度、ソフトバンク柳町達外野手らプロ野球選手も輩出している茨城・取手リトルシニアの練習方法を紹介。監督の石崎学氏が選手に意識させるのは“数値”にこだわること。これが後の成長に生きるといいます。【川村虎大】

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取手シニアでは、年間を通じて同じメニューをこなします。冬だからボールを握らないとか、大会前だからトレーニング量を落とすということはしません。常に、トレーニングはしますし、ボールを握らない期間は作らないようにしています。

練習メニューは6人1組のローテーションで行います。内容は野球の技量で隔てることなく、皆同じです。自由にやらせてしまうと、上手い子がやりたいものを優先してしまうことがあるので、全員同じ量をこなせるようにします。6人グループの決め方は練習場所に到着した順です。「皆で仲良くやるように」という意味です。

大会は完全実力主義ですが、練習試合には平等に出場させるようにしています。遠征等は毎回順番に連れていき、イニング数や打席数などのデータはエクセルで管理しています。結果を残せなくても試合に出る機会があるため、ハングリーさというものがなくなってしまうというリスクもありますが、私のチームでは試合経験を優先しました。

遠投、スイングスピード、立ち幅跳びなどの数値を選手に意識させる

練習の中で意識させているのは数値に向き合わせるということです。遠投やスイングスピード、立ち幅跳びなどですね。私自身のトレーナーとしての経験から、高校のフィジカルトレーニングのデータというものは持っています。甲子園に行ける学校、県大会でベスト4、ベスト8、県大会に出られない学校ではやはり数値に差が出ます。

もちろん例外はいます。立ち幅跳びは全く駄目だけど、甲子園常連校でプレーしている子もいます。それでも、基本的には強豪校の選手の方が数値は高い。そのため、選手には闇雲に練習させずに「30メートル走であと0.1秒速くなると、(守備範囲が広がって)このくらい(打球を)捕れるようになるぞ」などと具体的に伝えています。

中学1年の時点では数値を意識している子は少ないですね。「誰々より足が速い」とか、そのレベルです。数値に向き合うのは中学3年の夏が終わってからですね。だから、中3の夏が終わって高校までの期間は、個人技を伸ばしなさいと伝えます。この時期、驚くくらい伸びる子もいます。その時は「高校では凄く活躍するだろうな」って思います。

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