長崎県知事選 県民500人アンケート<4> 石木ダム・反対3割、賛成2割 4割超「判断できない」

石木ダムへの賛否

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダムは、事業採択から半世紀近く経過しても完成していない。2019年に全用地が強制収用されたが、住民13世帯は今なお水没予定地で暮らし抵抗を続けており、知事選でも争点の一つになる見通しだ。長崎新聞社が県民500人にアンケートすると“反対派”は3割で“賛成派”の2割を上回った。
 六つの選択肢で質問。「反対」「どちらかと言えば反対」と答えたのは計30.8%。「賛成」「どちらかと言えば賛成」は計20%だった。
 建設目的は川棚川の治水と佐世保市の利水だ。これに対し▽人口減少で社会状況が変わった▽自然を壊すべきではない-といった理由で「必要性に疑問」「不要」とする反対論が目立った。長崎市の40代会社員男性は「今まで(水は)賄えている。人口減少で今後需要があるのか」と効果に懐疑的。「住民の気持ちを逆なでするような姿勢が目立つ」(諫早市・40代アルバイト女性)など県の対応を疑問視する声も少なくなかった。
 一方、賛成した北松佐々町の30代会社員男性は「県北地域の水源確保という面で必要。水がないと企業誘致もままならない」と強調。大村市の40代会社役員男性は「長い目で見て減災につながるのであれば必要」と答えた。対馬市の70代団体役員男性は「(水没予定の)住民は古里への思いがあると思うが、地域住民の安全安心を考えたら、やはり必要」とした。
 残る選択肢のうち「計画を聞いたことはあるが判断できない」としたのは41.8%に上り、問題を縁遠く感じる人が多数いた。そもそも「計画の存在を知らない」層も7.4%いた。
 当事者である佐世保市、川棚町の住民はどうか。
 同市の回答者に限ると36.7%が賛成した。給水制限が264日間に及んだ1994年の「佐世保大渇水」の苦労を経験した人も多く、50代自営業男性は「『今足りているから』ではなく、備えとして必要」と訴えた。ただ、同市にも反対層は26.7%存在。30代自営業男性は「税金の無駄。水不足でもないのになぜ必要なのか。もっと他のことに使って」と求めた。
 同町も賛否が割れ、50代主婦は「ダムの話はあまりしないようにしている。穏便に進めてほしい」と複雑な心境を吐露した。
 県は昨年、水没予定地の住民と話し合いの機会を探ったが実現しなかった。「佐世保市民としては必要性を感じるが、反対住民としっかり話し合ってほしい」(30代団体職員女性)などの意見もあった。


© 株式会社長崎新聞社