日本企業の支払い振り、良さ際立つ=D&B調査

 ルーマニアは約束した日に代金を支払う割合は約1割――。
 日本では、仕入などの代金の支払いが約定期日に遅れると信用が低下する。決済期日の支払いは「当然」だからだ。だが、国が違うと受け止め方が違うから、話はややこしくなる。商慣習や国民性の違いはあるが、海外企業が期日に支払う比率は、最高がデンマークの88.6%、最低はルーマニアの13.1%だった。先進国でも「支払遅延」が日常的に起きている。これを日本人の感覚でおかしいと軽々に判断できない。 

 東京商工リサーチ(TSR)が業務提携するDun & Bradstreet(D&B)のパートナー企業が36の国や都市(日本を除く)の支払い振りを分析した。それによると、国により期日支払(On time payments)の比率は大きく異なる。
 ビジネスのグローバル化が進み、海外企業との直接取引も珍しくなくなった。それに伴い、日本企業が代金を期日通りに回収できないトラブルも増えている。
 アパレル大手の(株)レナウン(江東区、元東証1部)がグループの中国企業から売掛金を回収できず、資金繰りが悪化。その後、新型コロナの影響もあり、2020年5月に民事再生法(その後11月破産)を申請した。2021年12月に開催されたレナウンの第3回債権者集会では、「滞っている売掛金の回収が難航している」旨が報告された。
 欧米では、期日通りに支払わない企業が多く、取引を検討する際、支払い振りの検討が重要になる。このため、D&Bは各国の企業から月次の売掛情報の提供を受け、データベース化して支払い振りを分析している。

各国の支払い振り

国によって異なる支払い振り

 2020年の各国の支払い振りを分析したCRIBIS D&B(イタリア)の「Payment Study 2021」よると、期日通り払いの比率は、アジアでは中国25.2%、香港28%などが低く、台湾72.5%、フィリピン56%、タイ54.8%が高い。
 北・中南米では、米国55.7%と半数以上が期日払いだったが、メキシコ48.8%、カナダ31%と低い。北ヨーロッパでは、英国42.9%、アイルランド28.9%と低いが、デンマーク88.6%、ロシア73.7%、ドイツ65.1%と期日払いの比率が高い国が多い。南ヨーロッパはフランス40.4%、イタリア35.7%、ギリシャ23.3%、ルーマニア13.1%と北ヨーロッパに比べ、期日払いの比率が低い国が目立つ。
 なかでも同じイベリア半島に位置するポルトガルが16.4%に対し、スペインは44.1%で、隣国でも支払いへの認識は異なる。
 アフリカではエジプトが33.7%だった。

親会社の変更で支払いに異変も

 日本企業を同等の基準で分析すると、期日払いは99%で、ほとんどが請求通りに入金される。これは手形の厳格な期日決済を含め、長年培ってきた商慣習の結果とみられる。だが、海外では期日払いが「当たり前」でないことを理解することが必要だ。ある商社の審査担当者は、「海外の企業は、事前確認や督促しないと回収が遅れる」と指摘する。
 最近、海外企業の傘下に入った日本企業の支払い振りが変化したのではないか、というTSRへの問い合わせが増えている。再編で決済条件を変更したのかもしれない。
 各国の商慣習を十分認識し、回収不能にならないよう事前の取引先の情報入手がより大切になっている。

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