松山ケンイチ主演 舞台『hana -1970、コザが燃えた日-』開幕! 忘れられないもの、忘れてはいけないもの_ 舞台映像ダイジェストも!

沖縄の日本復帰50年の節目の年に、返還直前の沖縄を畑澤聖悟による脚本、栗山民也による演出で描く新作オリジナル作品。演出家・栗山民也が長年見つめてきた沖縄が題材、作家・畑澤聖悟に書き下ろしを託し、会話劇初主演となる松山ケンイチと初タッグ。返還直前の沖縄に生きる人々の様々な想いが爆発した、歴史的にも意義の大きなコザ騒動を背景に、沖縄、本土、アメリカ―― 戦後沖縄の縮図のようなバーでの一夜を描く物語。
母親の愛情、妹への想いをめぐって分断してしまった二人の血のつながらない兄弟。コザ騒動の夜、それとは全く関係なく、家の中で起きた事件により、ばらばらになりかけた家族に変化が起きる――― いびつな「偽の家族」が、心からぶつかり合いわだかまりを溶かしていく様子を通して、沖縄という土地が背負わされているもの。現在も変わらぬその業と見つめるべき未来を浮かび上がらせていく。
開演前、舞台天井に星条旗、そこにライトが当たっている。1970年の沖縄はアメリカが占領、沖縄が日本に復帰する2年前。中央にはスクリーン、よく見ると有刺鉄線。沖縄米軍基地のフェンスの上部に張り巡らされている。そのスクリーンに少女の顔が大きく映し出され、そして歌う。「花はどこへ行った」、英語の歌詞。”Where have all the flowers gone?”、1955年、ピート・シーガー制作。しかし、この歌が特に有名になったのは、1961年、キングストン・トリオがこの曲を録音して発表、翌年ヒット、それから1960年代のアメリカのフォークグループの一つであるピーター、ポール&マリー。通称PP&M、またはPPM。彼らが1962年にカヴァーし、こちらもヒット。また、日本で高い人気を誇ったブラザース・フォアもカヴァーしている。この1962年はベトナム戦争が始まった年、そんな時代背景も相まって反戦歌として広く知られている。この作品のタイトルの「hana」はおかあ(余貴美子)が経営しているバーの名前でもあり、この反戦歌のタイトルも含まれている。

スクリーンが上がり、そこにはおかあ、娘のナナコ(上原千果)、ヒモのジラースー(神尾佑)。沖縄は冬でも暖かく、コートもいらない。1970年の沖縄は、その前年に1969年7月8日ガス漏れ事故が発生、また、ベトナム戦争の長期化に伴い、ベトナムからの帰還・一時休暇の兵士で溢れていた。彼らは戦地で疲弊、基地外で酒、薬物、女に溺れ、犯罪も多発。1970年は960件、うち348件がコザ市だった。また交通事故は年間1000件を超え、加害者が現行犯逮捕されずに基地内に逃げ込めば琉球警察は介入できない。市民の不満や不安はMAXに達していた。店のソファはちょっと薄汚れ、古いジュークボックスが奥に。時代を感じさせる。電話が鳴る、もちろん、プッシュホンでもなく、ダイヤル。おかあ、ナナコ、ジラースー、ゆったりとした響きの沖縄の言葉でしゃべる。店の外は不穏な空気だが、店の中は日常、だが、外の穏やかでない雰囲気が店にも伝わってくる。そんな時、外から車が止まる音、そしてアシバー(ヤクザ)になって家に寄り付かなくなってたハルオ(松山ケンイチ)がやってくる。

足でドアを閉め、車のキーなどがついてるキーホルダーを指でグルグル。「かっこいいだろう」と自慢げ。久しぶりに顔を合わせる家族、そこへドタドタと音が…ハルオは家に隠れていたアメリカ兵(玲央バルトナー)を見つける、いわゆる脱走兵。怒るハルオ、無理もない、この時代はベトナム帰還兵が多くコザにおり、問題を起こしていたからだ。そこへ、人がやってくる気配が…すぐさま、アメリカ兵を2階にあげる。「毒ガス即時完全撤去を要求する県民大会」帰りの教員3人、その中の一人が息子のアキオ(岡山天音)。

その中の一人がおかあにビールがアメリカのものではなく、オリオンビールかどうかを確認。そしてビールと泡盛で!つまみはスーチカー(塩豚)。沖縄らしい、ちょっとゆるい雰囲気、パクパク、ゴクゴク(笑)。そんな空気を切るようにパトカーのサイレン。そのうちの一人、カメラをぶら下げた比嘉(櫻井章喜)が「戦争が終わって僕らは生まれた♪」と歌う。そして「語り継がれるべきだ」と言う。1970年に発表された北山修が作詞し、杉田二郎が作曲した楽曲。この「戦争を知らない子供たち」は1970年8月23日、大阪万博でのコンサートで初めて歌われ、この年の第13回日本レコード大賞新人賞を受賞した大ヒット曲。日本の代表的な反戦歌だ。おかあは問いかける「戦争は終わったんですか?」と。 1956年、経済企画庁は経済白書「日本経済の成長と近代化」の結びで「もはや戦後ではない」と記したが、1970年、沖縄は未だに返還されていない。おかあの一言は重みがある。アメリカの基地があるから沖縄の経済が回っていた、という側面がある。この時代なら、なおさら。そんなこんなの時、外はいよいよ大変な状況になりつつある。ジラースーが「大変なことになってる」と。後に「コザ騒動」と呼ばれる事件の勃発。外ではアメリカ人が取り囲まれている、大きな物音。
戦争の記憶、おかあ、ハルオ、アキオ、ジラースー、記憶はそれぞれ、想いも違う。

ハルオは「自分が誰だかわからん」と吐き捨てるように言う。戸籍燃失で戸籍がなくなってしまったハルオ。戸籍がなくなってしまった人は沖縄には多く、絵空事ではない。アキオと喧嘩になるハルオ、二人の言い合いはキリキリと心が痛む。誰かが悪いわけではない、言いようのない悲しみ。ついにおかあが言う「いい加減にしなさい!」と。外の暴動はますますひどくなるばかり。2階にいたアメリカ兵が悲鳴をあげながら「ベトコン、ベトコン」と叫び、頭を抱え、体を震わせる。いわゆる戦争の後遺症、PTSD、心的外傷後ストレス障害と訳されるが、震えたり、体が金縛りにあったように動けなくなったりする。このアメリカ兵もまた、戦争で精神的に崩壊してしまったのだ。戦争で人間らしさを奪われたアメリカ兵でも沖縄では民衆の憎悪の対象でしかない。さらに轟音が。店の中はいつもと変わらない風景、だが、空気は一変した。登場人物全てが”戦争”を抱えている。作品は語る、決して忘れたり、風化させてはならないことがある、と。コザ騒動の日に市井の人々は何を見て何を感じたのか、何を思い出すのか、コザ騒動そのものを扱うよりも、より戦争の愚かさや悲しみが伝わる。ここに登場する家族は血は繋がっていないが、深い奥底での絆と思い。これからも家族であり続けるであろう彼ら。「花はどこへ行った」、いわば、この作品のテーマソングのような位置づけ。沖縄はこれからも沖縄であり続ける。

なお、ロビーにコザ騒動の写真が飾ってある。フィクションだが、物語の背景はノンフィクション。沖縄の歴史の中の大きな出来事を改めて感じる。

<コメント>

[松山ケンイチより]
本日、 無事に初日を迎えることが出来て一安心です。
ただそれに尽きます。
無事に始まった舞台を無事に終わらせる。
これが全ての望みです。 これしか望んでいません。
このまま、 日々気を付けながら取り組んでいきたいと思います。

[岡山天音より]
『hana-1970、 コザが燃えた日-』は非常にビビットでありながら、 素朴なメッセージが込められた作品だと思います。
皆様がこの物語をどう受け止めてくださるのか、 これから公演が進むに連れ、 果たして自分がどこに漂着するのか、 期待が高まります。
今回、 久し振りに舞台に携わり、 舞台の刹那的な在り方と出会いました。
劇場に足を運んで下さる皆様と、 そこにしか芽吹かない「その瞬間」に全身を浸して行きたいです。

[余貴美子より]
まさに今のこのコロナ禍のように、 沖縄・日本・アメリカとの間で揺れ動くテーマの作品ですが、 新しい年の始まりに力づけられる、 勇気づけられるような物語になっていると思います。 沖縄言葉には難儀しましたが、 沖縄の明るさや底力というのはその言葉にもあると思っていて、 私は沖縄の人ではないけれど、 沖縄の言葉を口にすると元気になります。 血のつながらない家族が苦難を乗り越えて再生していくという内容ですので、 台詞を言う度に明るさと底力で乗り切っていこうという気持ちになります。 皆さんにもぜひ、 この”言葉との出会い”を楽しんで、 元気になっていただけたらと思います。

[栗山民也より]
手を取り合って
『hana』の初日の公演を終え自宅に戻るところなのですが、 クイーンの「手を取り合って」が無性に聴きたくなって、 車の中でかなりの音量で聴いています。
カーテンコールで観客と一緒になって大きく拍手しながら、 「人間の鎖」のことを考えていました。 米軍基地を取り囲んだ沖縄の「人間の鎖」。 小さな力かもしれない一人ひとりの力が、 手を取り合うことで繋がれ、 硬く口を閉ざした巨大な固まりをぐるりと包囲する。
なんだか熱くいろんなことが、 今、 クイーンの音楽とともに頭の中を駆け巡っています。 沖縄のみんなと酒場にいるような、 熱くてとても柔らかな気分。

<ストーリー>
1970(昭和45)年12月20日(日)未明。コザ市ゲート通りにある米兵相手のバウンショップ(質屋)兼バー「hana」では、看板の灯が落ちた店内で、おかあ(余貴美子)、娘のナナコ(上原千果)、おかあのヒモのジラースー(神尾佑)が三線を弾きながら歌っている。そこへ、アシバー(ヤクザ)となり家に寄り付かなくなった息子のハルオ(松山ケンイチ)が突然現れる。おかあが匿っていた米兵を見つけ、揉めていると、バーに客がやってくる。「毒ガス即時完全撤去を要求する県民大会」帰りの教員たちだ。その中には、息子のアキオ(岡山天音)もいた。この数年、顔を合わせることを避けていた息子たちと母親がそろった夜。ゲート通りでは歴史的な事件が起ころうとしていた。翻弄され続けた激動の沖縄を強く生きたひとつの家族の物語。

<概要>
タイトル:『hana -1970、コザが燃えた日-』
日程・会場:2022年1月9日~1月30日 東京芸術劇場プレイハウス
※2月 大阪、宮城 公演あり
[出演]
松山ケンイチ
岡山天音
神尾 佑
櫻井章喜
金子岳憲
玲央バルトナー
上原千果
余 貴美子
[スタッフ]
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也
美術:伊藤雅子
照明:服部 基
音楽:国広和毅
音響:井上正弘
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:田中麻衣子
舞台監督:加藤 高
主催:ホリプロ
企画制作:ホリプロ

公式HP https://horipro-stage.jp/stage/hana2022/
公式Twitter https://twitter.com/stagehana
撮影:田中亜紀

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