新庄監督がキャッチボール“遅刻”に賛辞 日本ハムドラ1達が徹底したマイペース

新人合同自主トレで汗を流した日本ハム・達孝太【写真:荒川祐史】

指揮官にんまり「芯をもってやっているね」

日本ハムの新人合同自主トレが9日、千葉県鎌ケ谷市の球団施設でスタートした。新庄剛志監督ら首脳陣が視察する中、ルーキーたちがプロ野球人生の第一歩を記した。ここで新庄監督も驚きの調整を見せたのが、ドラフト1位指名を受け入団した身長194センチの大型右腕・達孝太投手(天理高)だ。

「芯を持ってやっていましたね」と新庄監督が驚きの言葉を上げたのは、達のマイペースぶりを見たからだ。キャッチボールに入る前、指導していたトレーナーに「もう少し柔軟運動をしてからキャッチボールに入らせて欲しい」とお願いし、納得のいく動きを掴んでからボールを投げ始めた。育成まで含めれば13人に及ぶルーキーの中でひとり、キャッチボールに“遅刻”した形となった。

新庄監督が新人たちの動きを見るのは初めて。球場入りの際には「新人たちを見極めたい。開幕から使えるのか」としていたが、さすがに練習後は「きょうの状態だけじゃわからない」。一方で「僕が新人の頃は、キャッチボールでも僕だけ95メートルくらい投げてアピールしていた。『勝手にすんな』って怒られましたけど、僕はしてました」と、自ら主張する選手を求めていただけに、達の他人とは違う動きに目を引かれた。

達はキャッチボールに遅れてでも柔軟運動を優先した意味を「自分の体の状態を見て、いつもより少し上半身が硬かった。アップが不十分な中キャッチボールしても、意味がないので遅れてやらせてもらいました」と説明する。これまでも自分のルーティンとして、その日の状態に合わせた準備を貫いてきたという。

「他の選手と話していても、何か噛み合わない」他人より繊細な感覚

「自分はあまり周りの目が気にならない。いいところでも悪いところでもあると思うんですけど、いいようにとらえていただけるのは有難い。ずっとこういう性格なので……」

自分の体の状態と“対話”出来るようになってきたのは、天理高2年の春くらいだという。「他の選手と話していても、何か噛み合わない」と人より感覚が繊細なことに気づいた。今では起きてからちょっと動いただけで、その日の状態がわかるのだという。そこからより良い状態へ持っていくためのパターンを、いくつも持っている。

新庄監督の発言には「それなら、もう少し早くから柔軟をしておくこともできるよね」という続きもあった。ただこれにも、達なりの理由がある。「アップで崩れた部分を、しっかりやることでさらに効果的になるんです」。直前の準備運動で崩れた体の動きを、即座に修正したというのだ。

グラウンド上では、黒いマント姿の新庄監督に直接声もかけられた。短いやり取りの中身は「ナイショです。『投げられることを楽しみにしているよ』とは言っていただきましたが……」と自分の中にしまっておく。ビッグボスのハートをいきなり捉えたドラ1は、横一線の競争の中でどんな位置を掴んでいくだろうか。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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