“家族のため”野球界を去ったラミレス氏 「辞めて初めて気付く」妻への思いとは

前DeNA監督のアレックス・ラミレス氏【写真:荒川祐史】

妻に「出掛けておいで」子の世話引き受けるも…30分でギブアップ!?

2020年11月14日、DeNAの監督として最後の試合を終えたアレックス・ラミレス氏はその夜、自身のYouTubeチャンネル「ラミちゃんねる」を開設した。球団から用意されていたポストを断って退団し、野球界から離れた2021年。「Full-Count」のインタビューに応じたラミレス氏は、改めて感じた家族の大切さを語った。

「家族のために時間を使いたいという思いの中で、色々なことを学ぶことができた1年間でした」

MLBで135試合に出場したラミレス氏は2001年に来日すると、ヤクルト、巨人、DeNAと渡り歩いた。2000安打を達成し、外国人選手で史上初の名球会入りと輝かしい功績を残してきた。独立リーグも経験し、現役引退後は指導者として2016年から5年間、DeNAの監督を務めた。長期間成功を収めた一方で、遠征の多いプロ野球で家族との時間は必然的に限られた。

そんな生活を終え、最初に口をついたのは美保夫人への感謝の思いだった。

「妻がいかに大変な思いをしているか、辞めて初めて気付くと思うんです。子どもたちの面倒を見て、家のこともしなくてはいけない。野球界にいるときはそこをなかなか評価をしてあげられていなかったというか、こんなに大変だったと分かってあげられていなかった。もしかしたら、野球選手として働くよりも大変なことを彼女はしているのではと気付かせてもらいました」

6歳の長男剣侍(けんじ)くん、3歳の次男寿凛(じゅり)くん、2歳の長女莉明(りあ)ちゃんは元気盛り。監督時代も朝の家事を手伝うことはあったが、ナイターの際には美保夫人から薦められて1時間ほど昼寝をしてから球場に向かう日も多かった。しかし今は「妻に『1時間くらい出掛けておいで』とか言うんだけど、30分くらいで『早く帰ってきて! どうしたらいいんだ』って(笑)、僕が昼寝をしていた時も、妻がいかに大変だったか分かりましたね」と尊敬の念を抱いた。

生放送24時間テレビでの子どもたちを「誇りに思いました」

ラミレス氏の昨年のテレビ出演は約50本に及んだ。野球とは関係のない、バラエティにも数多く出た。それも全て“家族のため”だった。一家に密着した「人生が変わる1分間の深イイ話」はラミレス家の最高の思い出だという。24時間テレビでは、小中学生の音楽ユニット「Foorin」の「パプリカ」の歌とダンスを披露。一生懸命練習する剣侍くんや、練習せずに生放送で完璧に歌った寿凛くんの姿に「子どもたちを誇りに思いました」と優しいパパの顔を見せた。

家族との時間を大切にしながら、クロスフィットジム「Motomachi Bay」を夫妻で運営。自身もトレーニングで体を鍛え上げ、47歳とは思えないほどの肉体を維持している。さらに現在は日本と母国ベネズエラの架け橋となるためのビジネスを展開。ベネズエラのコーヒーやカカオなどを日本に紹介し「日本とベネズエラのために貢献していきたい」と精力的に活動している。

穏やかながら刺激的な毎日を「リフレッシュ期間」としたが、やはり生粋の野球人だ。最後は力強く言った。

「今凄くいい時間を過ごしているんですけど、野球に対する情熱は決して冷めていない。機会があるのであれば野球界に戻りたい気持ちがあります」

常にポジティブに目標をクリアし続けてきたラミレス氏。次はどんな道が待っているのだろうか。(町田利衣 / Rie Machida)

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