コーチは新人の質問に「答えるな」 日本ハム新庄監督が“指導禁止令”出した真意

新人合同自主トレの視察に訪れた日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

「せっかくいい素質の子がプロに入っても…」

日本ハムの新人合同自主トレが9日、千葉県鎌ケ谷市の球団施設でスタートした。午後に行われたスタッフ会議では2月1日に始まる春季キャンプの日程や方針をフロント、コーチ総出で話し合い、この席で新庄監督は、新人の質問にコーチは「答えるな」という“お触れ”を発したという。意外な指令の真意は、どこにあるのだろうか。

スタッフ会議を終えた新庄監督は、少々意外な言葉を口にした。「新人がコーチに対して『どうしたらいいですか』と質問しますよね。これに『答えるな』と言いました」。この日、プロの世界へ第一歩を踏み出した13人の新人への“指導禁止令”だった。

「1年目は自由に暴れてほしいんですよ。だから『言わないでくれ』ということです」

プロに入って時間が経つごとに、スカウトに高く評価されたはずの“自分らしいプレー”を見せられなくなる選手は多い。投手で言えば、どんどん球速が落ちていくといった例も決して珍しくはない。新庄監督も、そうしていつしか球界を去っていった才能を、たくさん見て来たという。

「せっかくいい素質の子がプロに入ってもコーチに押さえつけられて、2、3年でいなくなるのを本当にたくさん見てきた。かわいそうだなと」

そんな悲劇が生まれる原因はどこにあるのだろうか。

「クビになって、責任を取るよというコーチがいますか?」

「指導を聞かないといけない状況になっているんですよね。でも、(選手が)クビになって責任を取るよというコーチがいますか? いないじゃないですか。それなら思い切りやりなさいということです」

1年目はまず、思い切り自分の力を見せてほしい。その上でプロの壁を乗り越える必要を感じたら、手を差し伸べるという親心だ。

指揮官はキャンプまでの毎日が楽しくて仕方がないという。自らのテレビやSNSを通じた発信を目にした選手たちの、目の色が変わったのを感じている。「誰を使いたいとかメンバー組みますよね。ラインナップを作っていたら、頭がおかしくなるんじゃないかと思う。1つのポジションに2~3人固まっている。ここに助っ人外国人も入って来る。もう(決めるのは)じゃんけんでもいいのかなくらいの悩み」。チームを強くするために不可欠な“競争”が、あちらこちらで生まれている。もちろん、即戦力候補を始めとした新人の名前も、その中にある。

「今年はテスト段階です。選手も僕もコーチも全部テスト。それくらいガンガン攻めていこうということ。日本ハムの動きが気になるという1年にはしたいですね」

年末まではテレビ番組への出演が続き、多忙を極めた。その中で、残念に思っていることがある。「番組ごとに『これからのプロ野球をお願いします』って言ったけど、使われないんだよね。ショックで、言い続けてやろうと思っている」。言葉でもやり方でも、新しい日本プロ野球の姿を生み出していく。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

© 株式会社Creative2