認知症で起こりうるお金の問題…「老後資金を生活費に使って年金を繰下げる」具体的な対策を伝授

認知症になりたくない…と思っている人は多いかもしれません。私もそのひとりです。とは言うものの、認知症は長生きをすると避けられない症状です。2025年には、5人に1人は認知症を発症すると言われています。

自分も怖いですし、家族にも大変な思いをさせてしまうかもしれません。さらに、困るのはお金の問題です。認知症になると介護のお金もかかりますが、何よりもお金の管理ができなくなるのです。自分の資産も凍結されて、自分のお金を自由に使えなくなることもあります。

今回は、認知症になっても困らない、簡単なお金の管理術を紹介します。


資産があることさえ忘れてしまっては、もうお手上げ?

認知症になって、お金の管理ができなくなるのと何が困ってしまうのか?を説明します。

まず、金融機関からお金を引き出すには、本人確認が必要になりますが、認知症になってしまうと、本人の意思確認ができなくなるのです。そうなると、預貯金だけではなく、株式などの有価証券も自由に売買ができなくなります。不動産も同じです。自由に売買ができないので、有効活用ができません。要するに認知症になってしまうと資金が凍結してしまいます。

さらにいうと、自分の資産がわからなくなってしまうのです。

銀行預金などは通帳があれば、資産を確認することができます。

しかし、ネット銀行、ネット証券などを利用していたら、そもそも口座があるのかどうかを確認することも難しくなりますし、IDやパスワードだってわかりません。自分の資産がわからなければ、もうお手上げです。手の打ちようがなくなってきます。

その上、高齢者で認知機能が衰えた人は、特殊詐欺などの標的になりやすいので気をつけなければなりません。とは言っても認知機能が衰えてしまっては、気をつけようがないですよね。ですから、認知症を発病する前に備えておく必要があるのです。

一般的な認知症の備えは

備える方法ですが、不動産とか有価証券など資産が多い人には、信託銀行の金銭信託とか、民事信託(家族信託)などを利用して財産を管理する方法があります。もちろん、これらの信託財産を管理するには、手数料がかかります。

財産の凍結を防いだり、特殊詐欺に備える方法としては、成年後見制度を利用する方法があります。

ただし、成年後見制度は、財産の保全が主な目的なので、積極的な運用をしたい場合には向きませんし、やはり手数料がかかります。

公的年金は、自動的に資産管理ができる?

「金銭信託」「家族信託」「成年後見制度」は、認知症に備える方法として有効ですし、うまく利用したいものです。ただし、手続きが複雑で、手数料もそれなりにかかってしまいます。

そこで、簡単な認知症に備える方法を紹介したいと思います。

高額な資産がある人には向いていませんが、老後資金が2,000万~5,000万円の人には、オススメの方法です。

認知症を発病したときにもっとも向いている資産とは、じつは公的年金なのです。なぜかというと、公的年金は、一生涯、毎月一定額を受け取ることができるからです。

公的年金は2ヵ月に1回の振込になりますから資産管理の必要はありません。つまり毎月使える金額が決まっているので、詐欺にも遭いにくいのです。

ですので、老後資金をできるだけ公的年金に移すことで、自動的に一生涯の資産管理をすることが可能になります。

老後資金を生活費に使って、その間は繰下げ受給をする

「老後資金を公的年金に移す?」といってもピンとこないと思います。老後資金が3,000万円ぐらいあった場合、運用しましょうと、メディアでよく取り上げられますが、それよりも安全で、効率いいのが公的年金の利用です。老後資金を生活費に使い、その間に年金の繰下げ受給をする方法です。年金の繰下げ受給をすると年8.2%の増額になります。確実で利率のいい増やし方は他にはありません。

具体的に、どうすればいいかをシミュレーションしてみましょう。

3,000万円の老後資金があったとします。夫婦の年間支出は350万円とします。夫婦の合計年金受給額は65歳の時点で250万円ですが、65歳から70歳まで繰下げ受給をしたとします。

65歳から70歳まで年金の繰下げ受給をするための、生活費などは老後資金からの取り崩しです。350万円×5年=1750万円。老後資金の残高は1250万円に減ってしまいましたが、70歳からの年金は42%の増額で355万円になっています。

お金の心配のいらない老後生活が実現できる!

70歳以降は、毎年5万円の黒字になるので、夫婦の家計は収支のバランスが取れたことになります。公的年金は一生涯受け取れるので、老後資金の心配が無くなりますね。

老後資金は、1,250万円残っていることになりますが、これは余裕資金として残しておきましょう。もし、なにかトラブルがあったり,介護になったとしたら、この余裕資金を使うようにしましょう。

さて、今回主題である認知症対策を考えてみましょう。

3,000万円から1,250万円になったので、最悪被害にあったとしても、被害は少なく食い止めることができます。また年金で収支のバランスが取れているので、日常生活ができなくなることはありません。

また、認知症を発症した場合も、資産が凍結になっても、年金は受け取れるので日常生活に与える影響は少ないです。相続の場合も、金額が少ないので相続税の心配をしなくてもいいでしょう。

もっと資金が多い人は、この方法と併用して、家族信託などを利用するのがいいと思います。

なるべく健康が保てるように食事のバランスや、運動にも気をつけたいですね。そして、一生涯、お金の心配をしないで暮らせる老後にしていきましょう。

© 株式会社マネーフォワード