長崎県知事選 県民500人アンケート<5完> IR誘致賛成47%、反対33% 佐世保一定理解 高齢層反感

IR誘致への賛否

 長崎県と佐世保市は地域経済浮揚策として、ハウステンボス(HTB)にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指している。長崎新聞社の県内有権者500人アンケートでその賛否を聞いたところ、賛成派が半数近くを占めたものの、反対派も3割を超え、抵抗感が払拭(ふっしょく)されていない状況をうかがわせた。
 六つの選択肢のうち「賛成」「どちらかと言えば賛成」は計47.2%。これに対し「反対」「どちらかと言えば反対」は計33.2%だった。
 「誘致計画を聞いたことはあるが判断できない」は17.4%で、「計画のメリットとデメリットがよく分からない」(東彼川棚町・20代アルバイト女性)など情報不足を指摘する声も挙がった。「誘致計画の存在を知らない」は2.2%。
 地域別で比較すると“南北の温度差”が浮かび上がる。HTBが立地する佐世保市は賛成派が64.4%に上り、期待感や一定理解の広がりがみてとれる。ところが、県都の長崎市は42.4%にとどまった。
 年代別でみると、賛成派の割合が最も高いのは40代の58%で、30代と18~29歳も50%前後。だが50、60代は40%程度、70代以上は22.2%で高齢層ほど反感を持つ傾向がある。
 県はIRへの来訪者を年間延べ約840万人、経済波及効果を年間約3200億円と試算する。
 賛成派の理由にも「観光振興」「雇用創出」「所得増加」を期待する言葉が並ぶ。「観光の起爆剤として県全体にいい効果をもたらす」(西彼長与町・20代公務員男性)、「全世界に向けた『長崎』の発信強化につながる」(長崎市・60代会社員男性)といった待望論もある。
 一方、反対派の多くは、カジノによる「ギャンブル依存症」や「治安の悪化」を危惧。HTBの「イメージダウン」を懸念する意見もあった。
 県がIR誘致方針を決めたのは新型コロナウイルス禍の前。このため「コロナ前の発想。(集客の見通しは)風呂敷を広げすぎ」(西海市・40代会社員男性)、「時代にそぐわない政策」(川棚町・70代男性)という見方もあった。
 知事選に出馬表明した3人のうち、現職の中村法道氏(71)と医師で新人の大石賢吾氏(39)はいずれもIR誘致を推進する考え。会社社長で新人の宮沢由彦氏(54)は賛否を明言せず、見直しも検討するとしている。国はIRについて、年内にも全国最大3カ所を区域認定するとみられ、地域の「十分な合意形成」を判断材料の一つとする。誘致には次期県政トップの判断や力量も大きく問われる。

     =おわり=


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