殿堂入り候補・オルティス 歴史的な現役ラストイヤーを振り返る

今回のアメリカ野球殿堂入り投票から有資格者となったデービッド・オルティス。この男は2015年11月18日、40歳の誕生日に翌2016年シーズンが現役ラストイヤーとなることを発表した。そして、2016年は打率.315、38本塁打、127打点、OPS1.021という引退する選手とは思えないような素晴らしい成績をマーク。現役ラストイヤーにオルティスを超える成績を残すのは困難、いや不可能かもしれない。そのオルティスが現役ラストイヤーに込めた思いや当時の心境などを振り返っている。

オルティスが2016年に記録した48二塁打、38本塁打、127打点、87長打は現役ラストイヤーの選手としては史上最多記録である。また、OPS1.021はその年のリーグトップの数字だった。さらに、データサイト「ベースボール・リファレンス」によると、この年に記録したオフェンシブWAR(5.1)、OPS+(164)、塁打数(333)も引退前年の選手としては史上最高だったという(伝説の名打者、シューレス・ジョー・ジャクソンは現役ラストイヤーにこの3部門でオルティスを上回る数字を残しているが、「ブラックソックス事件」による永久追放であるため、対象外とする)。

メジャーリーグ公式サイトによる電話インタビューのなかで、オルティスは「あんな成績を残したあとに引退する人はいないと思う」とコメント。しかし、迷いはなかった。「もうダメだったんだ。ガス欠になったんだ」とオルティス。2016年限りでの現役引退を決断した最大の理由は、2012年7月から悩まされていたアキレス腱の痛みだったという。「正直に言うと、あのシーズンは例年以上に体調管理に気をつけていた。それでもアキレス腱に痛みが出た。他の部位は健康だったんだけどね」と当時を振り返った。

また、自分の子供のような年齢の選手が周りに増え始めたことも引退の決断を後押ししたという。「2015年にシアトルで二塁打を打った。投手が交代して新しい投手が出てきたが、投手の周りに内野手が集まっている様子を見ると、21歳や22歳の選手ばかりだった。タンパベイやヒューストンでも同じような状況だった。それで『来年で終わりにしよう』って思ったんだ」とオルティスは語る。

「あの年、僕は全力を尽くした」と現役ラストイヤーを振り返ったオルティス。「まだやれたのでは」と惜しむ声は少なくないが、少なくともオルティス自身は2016年限りで引退したことを全く後悔していないようだ。

© MLB Advanced Media, LP.