愛川・中津川河川敷のキャンプ地でごみ拾い 1人で始めたら、2万人に広がった

「今夜は湯豆腐」と、まきストーブの準備をする小山仁さん=愛川町角田の中津川河川敷

 癒やしを与えてくれる自然のキャンプ地を、自らの手で美しく保ちたい-。ソロキャンプ愛好家でつくる「日本単独野営協会」の小山仁代表(45)=横浜市鶴見区=らが、活動拠点とする愛川町角田の中津川河川敷の清掃に情熱を傾けている。1人で始めた活動は現在、全国に会員2万人を数える。かつては粗大ごみが目立った河川敷に今、ごみは見当たらない。「キャンプでごみを捨てない世の中へと社会を変えたい」。小山代表の熱意に、地元住民もエールを送る。

 中津川の角田大橋上流の緑豊かな河川敷に毎週末、数十の個人やグループが車やバイクで訪れ、思い思いにテントやタープを張る。簡易トイレはあるが、キャンプ場ではない。それでも夕方にはいくつものたき火台から煙が立ち上がる。火を見守る男性、おやつを楽しむ女性、天体望遠鏡を準備する人など、好きなスタイルでキャンプを楽しむ。

 小山代表が初めて訪れたのは十数年前。いわゆる「ブラック企業」で働き、休みはほとんどなかった。久しぶりの休みにミニバイクで遠くの山へと走り続け、気付いたらここにたどり着いた。暖かい季節でテントもなく野宿だが、自然に包まれたゆったりとしたキャンプ体験が傷ついた心を徐々に癒やしてくれた。

 だが、その河川敷にはごみが目立った。草むらの陰には冷蔵庫なども転がっていた。何度も訪れるうち、1人でごみを拾い始めた。だが、1人でできることは限られる。「ほかにも同じように思う人がいるかもしれない」。2018年に日本単独野営協会を発足させ、会員制交流サイト(SNS)などで賛同者を募った。ソロキャンプブームもあって会員は急速に増え神奈川、山口、大阪、兵庫、埼玉と五つの支部もできた。年に数回集まって各地で清掃活動やキャンプイベントを催す。

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