「ずっとお断りしていた」斎藤隆コーチが17年ぶりにDeNAに“復帰”した理由

DeNA・斎藤隆チーフ投手コーチ【写真:中戸川知世】

12球団で最も長く優勝から遠ざかっているチームへ“喝”

新任のDeNA・斎藤隆チーフ投手コーチが10日、神奈川県警都筑警察署の1日署長を務めた。現役時代にはDeNAの前身である横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズで14年間(1992~2005年)プレーした後、メジャーリーグ、楽天でも活躍。日米通算112勝96敗139セーブを誇る。17年ぶりのチーム復帰を果たした斎藤コーチに、球団が求めるものとは何か。

「この制服は野球のユニホームとはまた違って、キュッとした感じがある。身の引き締まる思いです」。緊張した面持ちでそう語った斎藤コーチは、188センチの長身。警察の制服がよく似合うが、ズボンの裾だけはやや短めだった。「規格品では1番長いサイズ。こんなに足の長い警察官はいないので!」と県警関係者を苦笑させた。

DeNAは横浜ベイスターズ時代の1998年にリーグ優勝と日本一を成し遂げたのを最後に、昨年まで23年間Vなし。オリックスが昨年25年ぶりのリーグ優勝を果たしたことから、12球団で最も長く優勝から遠ざかっているチームとなった。今年は斎藤コーチの他にも、石井琢朗野手総合コーチ、鈴木尚典打撃コーチが就任。1998年の優勝に主力として貢献した3人が一斉に復帰し、“負け慣れ”払拭を期待されている。特に斎藤コーチは楽天時代の2013年にも、リリーバーとして球団創設初Vに貢献しているからなおさらだ。

実はDeNAは、斎藤コーチが2015年限りで現役を引退した当初からチーム復帰を打診していたが、本人が「現場に戻るつもりはありません」と固辞。「ずっとお断りしていたのは、自分は管理職には向いていないと思っていたから」と明かす。

1日署長を務めたDeNA・斎藤隆チーフ投手コーチ【写真:宮脇広久】

「コーチとは学校の先生ではなく、塾の先生のようなもの」

実際、引退後はテレビのスポーツ番組のキャスターやパドレスのアドバイザーなどを務めていた。ところが一昨年、大学時代から親交のある高津監督の強い要望で、ヤクルトの1軍投手コーチに就任。だが、チームが最下位となった責任を取り、ヤクルト球団の慰留を振り切って1年間で退団した。斎藤コーチは「改めてDeNAの熱意を感じたこともありますが、(ヤクルトのコーチを務めたことで)断る理由がなくなってしまったのが正直なところ」と笑い、「やる以上は精一杯やっていきますし、結果的に皆さんが期待する形で効果が現れたら最高」と意欲を新たにしている。

メジャーリーグで7年間プレーした上、フロント業務にも携わった経験から、外国人選手とのコミュニケーションはお手の物。「それに関しては英語力云々よりも、自分がメジャーでチームのみんなに支えてもらった経験を元に、異国から来ている外国人選手をサポートしていきたい」とうなずいた。

「コーチとは学校の先生ではなく、塾の先生みたいなものだと思っている」と語る。「全員に当てはまる課題や目標を掲げるのは難しい。差別はしないが、ある程度の区別はしてて、個々に課題を考えていきたい」と説明。きめ細かく各選手と1対1で向き合っていく構えだ。昨年の秋季練習を動画で撮影済みで、今後は各選手のデータの収集、分析を進めていく意向。「短期だけでなく、中長期的なプランを立て、半年とか2か月置きに見直していかないといけない。1、2軍スタッフ全員の意見を統一させることが大事」と方針を掲げた。

昨年12球団ワーストのチーム防御率4.15に終わった投手陣の建て直しを担う斎藤コーチ。三浦大輔監督の就任1年目に最下位に沈んだDeNAだが、ベンチの雰囲気が大きく変わりつつあるのは間違いない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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