がん抑制タンパク質を発見、脳腫瘍で効果確認 世界初メカニズム解明

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檜井栄一教授

 がん細胞を生み出す能力を持つ「がん幹細胞」に発現するタンパク質「SMURF2(スマーフツー)」が、がん幹細胞の機能を調節していることを発見したと、岐阜薬科大の檜井(ひのい)栄一教授(45)らの研究グループが11日発表した。SMURF2のリン酸化によって、がん幹細胞が原因で発現する治療困難な脳腫瘍「グリオブラストーマ」の進行を抑制できることを世界で初めて解明。がんの根治に向け、がん幹細胞のメカニズムの一端が明らかになった。

 グループは、患者由来のグリオーマ幹細胞から、SMURF2の働きを抑えた「SMURF2抑制細胞」を作製し、がん幹細胞の機能が増強したことを確認した。SMURF2抑制細胞をマウスに移植したところ、生存期間が大幅に短縮し、腫瘍サイズも増大した。

 グリオブラストーマを含む悪性度の高い腫瘍組織を調べると、SMURF2を構成するアミノ酸「Thr249」のリン酸化が抑制されており、SMURF2の活性化が抑えられていた。SMURF2が発現した細胞と、SMURF2の働きが弱い細胞をマウスに移植したところ、発現細胞を入れたマウスは生存期間の延長と腫瘍サイズの減少、働きが弱い細胞を入れたマウスは生存期間の短縮と腫瘍サイズの増大が見られた。

 SMURF2のリン酸化によって、がん細胞の機能を調節するタンパク質の結合体の分解を促進させていることが分かった。檜井教授は「SMURF2のリン酸化のスイッチをオン、オフする仕組みが分かったことで、がん根治のための新しい治療戦略ができる」と話した。

 グループは現在、SMURF2のリン酸化を調節する創薬に取り組んでいる。他のがんにも当てはまる可能性があり、有効な治療法が確立されていない疾患の解決が期待されている。

 檜井教授らのグループは岐阜大、金沢大、東京大と共同研究し、研究成果は英国学術雑誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に掲載された。

 【グリオブラストーマ】 脳内に存在するグリア細胞が腫瘍化した「グリオーマ」のうち、悪性度と発症頻度が最も高い疾患。急速に悪化する頭痛や認知症、運動まひなどを引き起こす。標準的な治療法として腫瘍組織を手術で摘出しても、脳組織に染み込むように広がるため、完全に取り除くことができない。抗がん剤や放射線治療でも、5年生存率は10%程度とされ、数十年の間、治療成績に大きな改善がなかった。

岐阜薬科大学