硬貨取り扱いに手数料 枚数によっては赤字に… 募金活動に不安の種

全国に設置された募金箱。硬貨が大半を占める=2021年12月、宇都宮市福岡町

 多数の硬貨の取り扱いに手数料を課す動きが銀行に広がり、募金を活動資金に充てている福祉団体が対応に苦慮している。募金箱を置く協力者らが団体に入金する際、手数料の負担が発生するためだ。「最後のとりで」のゆうちょ銀行にも17日、手数料が新設される予定で、団体の関係者は「手数料を重荷に感じ協力をやめる人も出てくる」と懸念を強めている。

 「募金が減れば死活問題だ」。盲導犬の育成などに取り組む東日本盲導犬協会(宇都宮市福岡町)の担当者は不安を口にする。

 同協会は2072個の募金箱を全国に設置。盲導犬育成費用の9割超を募金や寄付で賄っている。年間で少なくとも500万円の募金が集まり、うち4割を振り込みによる送金が占める。募金は1円玉を中心とした小銭が多い。

 振り込みはゆうちょ銀行の利用が多いが、同行では17日から、窓口や現金自動預払機(ATM)での硬貨の取り扱いに手数料が発生する。窓口の場合は51~100枚につき550円、101~500枚につき825円、501~1千枚につき1100円などだ。

 「額が多い人ほど送金の際に負担となる。枚数によっては手数料で赤字になる」。奈良部武司(ならべたけじ)事務局長(78)は声を落とした。

 地域の福祉活動を支援する栃木県共同募金会の担当者も「口座によって手数料に違いが出るかもしれない」と頭を悩ませている。母体の中央共同募金会全体で対応を検討しているという。

 各行が手数料を課すのは、キャッシュレス化の推進や業務負担の軽減が背景にある。県内に店舗を持つ銀行も近年、窓口での大量硬貨の入金にかかる手数料の新設や値上げに踏み切っている。

 義援金や募金を目的とした入金の場合は手数料がかからないとする銀行も多いが、別途申請や確認が必要となる。奈良部事務局長は「いずれは募金もキャッシュレスに移行していく必要がある」とする一方、「キャッシュレスを運営する業者に支払う手数料が高く、現場に還元できるお金が減ってしまう」と難しさを指摘した。

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