<維新とカネ>辻元清美に勝った池下卓議員を刑事告発 父親からの寄付不記載など「常習で悪質」と告発人

国会議員がわずか一日の任期で「文書通信交通滞在費」(文通費)が満額もらえることに対して異議を唱え、論議の火付け役となった池下卓議員が、父親から事務所をタダで提供されていたことを3年間も政治資金収支報告書に記載しておらず、さらに父親からの寄付が法律で定められた上限を超えていたことが政治資金規正法に違反するとして12日、市民団体から大阪地検に刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

池下卓衆議院議員(公式HPより)

◆父親からの実家提供と150万寄付が上限超え

告発したのは、政治資金オンブズマンの上脇博之共同代表。告発されたのは、池下卓衆議院議員ら4人だ。

告発状によると、池下卓衆議院議員の政治団体である「池下卓後援会」は、池下卓議員の実家、つまり池下議員の父親が所有する物件に事務所を置いていて、家賃を支払わず無償提供されていたにもかかわらず、それを寄附収入として記載していなかった。これは政治資金規正法に違反する。

さらに2020年12月25日に父親から現金150万円の寄付を受けていた。一個人が政治団体にできる寄付の上限は150万円までと政治資金規正法で決められている。

つまり、父親から寄付を上限ぎりぎりの150万円の寄付を受けていた上、事務所を無償提供されていたことになる。少なくても時価で年間48万円とされる事務所家賃を合わせると、年間198万円の寄付を受けていたことになる。法律で定められた上限を超えているため、これも政治資金規正法違反となる。

そしてさらに、2020年だけでなく、2019年、2018年も父親から150万円の寄付を受けている上、事務所の無償提供が記載されていない。こうしたことから、この問題が常態化していたことが伺える。

これらの問題に対して、池下卓衆議院議員は「父親から(実家は)池下卓個人に貸していて、それを池下卓が後援会に無償で貸している」と自身のブログで弁明し、「父親から池下卓後援会への違法な寄付にはあたらない」と主張した。ところが…

池下議員が無償で父親から借りて事務所としていた実家(撮影:鈴木祐太)

◆文春取材後に後知恵で弁明か?

この問題を最初に報じた週刊文春1月6日発売の記事には、次のように書かれている。以下引用する。

――事務所は無償提供?
「そうですね、はい」
――収支報告書に不記載だ。
「そうですね……。いっぺん調べないといけないすね」
――家賃分を含めると、父親からの献金が上限を超した“違法献金”になる。
「ああ、そうか、そうか……。なるほど、なるほど」

つまり、池下個人は最初の取材を受けた時点では、ブログに書いたような認識をしていなかった。

池下卓衆議院議員は、2021年の衆議院選挙で現職で、立憲民主党の辻元清美議員を小選挙区で破り当選した。当選直後に出演した討論番組で、当選した10月31日の一日だけの任期で一か月分の文通費100万円がもらえるのは庶民の感覚から離れていると問題提起し注目を浴びた。

週刊文春の報道を受けての弁明ブログを告知した池下議員のツイート

◆「常習犯で悪質」と告発人

政治資金オンブズマン共同代表であり、今回の告発人でもある神戸学院大学の上脇博之教授は、次のように指摘する。

「一か月前に日本維新の会の馬場伸幸共同代表らを寄附の総枠制限(2000万円)違反で告発しました。今回の池下卓議員らの告発は寄附の個別制限(150万円)違反です。いずれも寄附の量的制限違反であり、違法な寄附の受領です。日本維新の会の議員には、違法寄附の受領を禁止している政治資金規正法を遵守する精神が欠けているのではないでしょうか。

そのうえ、今回の個別制限違反は3年間も行われていましたし、無償提供による寄附の不記載は長年続いており、常習犯です。池下議員の弁明も後知恵によるもので真実ではないでしょう。反省しているとも思えません。看過できないので告発しました」

「身を切る改革」を掲げている維新の会から立候補して大阪府議となり、国会議員にまで上り詰めた池下卓議員。税理士の資格までもっているにもかかわらず、自身の「政治とカネ」に甘すぎ、ずさんだったと言われても仕方がない。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

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