【解説】 朝鮮の極超音速ミサイル開発を頑なに否定する米韓の詭弁

朝鮮の国防科学院が5日に続き11日にも極超音速ミサイルの試射を行い成功させたことで、朝鮮の極超音速ミサイルを弾道ミサイルと強弁していた米韓の主張が詭弁であり、中ロと並ぶ朝鮮の極超音速ミサイル技術を否定するためのプロパガンダであることが白日の下に晒された。

稚拙な理由

周知のように韓国軍部は、ミサイルの弾頭部が「円すい状」であることを根拠に、5日に試射されたものが極超音速ミサイルではなく弾道ミサイルであると主張したのだ。

一国の軍部たるものが、このように子どもも騙せない稚拙な理由を挙げて「弾道ミサイル」と強弁しているのを見ると、あきれて開いた口が塞がらない。

極超音速ミサイルの弾頭部には、「円すい状」のものもあればグライダー型のものもある。実際まだ成功には至っていないが、米国が開発している極超音速ミサイルには「円すい状」のものもあり、「円すい状」だから極超音速ミサイルでないとするのは幼稚な詭弁に過ぎない。韓国軍部の説明があまりにも幼稚なためか、韓国航空大学航空宇宙・機械学部のチャン・ヨングン教授は10日に「米陸軍が開発中の長距離極超音速兵器(LRHW)の滑空体も円錐形」などと指摘、子供だましの詭弁で「予断」すべきではないとする分析を発表した。

朝鮮が5日に続き11にも同型の極超音速ミサイルを試射、結果について「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は、距離600キロメートル辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240キロメートル強い旋回機動を遂行して1000キロメートル水域の設定標的を命中した」と明らかにした。

冒頭に掲げた写真は、試射を参観した金正恩総書記がみていた、ミサイルの飛翔した軌道を示した映像だ。韓国軍部は最高速度がマッハ10、最高光度0キロ、負傷距離700キロと発表したが、朝鮮側の発表と比べてみると、まともに観測、探知できないでいることがわかる。

にもかかわらず、韓国軍部はそれが極超音速ミサイルであることを否定するのに躍起になっている。

朝鮮が「極超音速ミサイル技術を誇示」

事ここに至ると、いつもなら朝鮮のミサイルを過小評価し、韓国政府、軍部の発表を垂れ流しにしてきた、保守系のマスコミ、評論家、研究者までもが、頑なに否定する軍部の見解に反して極超音速ミサイルであることを認めるに至っている。

保守系の「中央日報」は12日付で「北朝鮮はこの日の発射で国防部の評価に反論し、実際に極超音速ミサイル技術を保有している事実を誇示した」と報じざるを得なかった。またニューシス通信(11日)は、「これからは韓国国防部も北朝鮮が5日と今日試射したミサイルが極超音速ミサイルであることを否定できなくなった」と報じた。また同通信は、評論家などのコメントを紹介する形で、国防部が朝鮮のミサイル関連情報を遮断して「極超音速ミサイルであることをあえて否定しているとの批判が起きている」、さらには軍部が朝鮮のミサイルを迎撃できると主張していることと関連、「根拠のない自信」との批判が起きていると報じている。

耐えがたい屈辱

韓国軍部が子供も騙せない幼稚な詭弁にしがみついているのは、米国の意向に沿ったものであろう。

米国務省とインド太平洋軍司令部、駐韓米軍司令部は当初から何らの根拠も示すことなく、朝鮮の極超音速ミサイルを「弾道ミサイル」と言い張っている。韓国軍部の主張が作戦指揮権者である米軍の意向に沿ったものであることは想像に難くない。

CNNの報道(2021.10.22)によれば米国は昨年に二回極超音速ミサイルの実験に失敗、「極超音速兵器の開発競争で中国とロシアに後れを取った形だ」とのこと。米国が極超音速ミサイルで中ロに後れたことに焦り実験を繰り返しており、「2020年代の前半から半ばまでに実戦配備を目指すとしている」(NHK2021.10.22)

しかし実験は思うように進んでおらず実戦配備できるめどはたっていない。

この米国の動きをしり目に朝鮮は極超音速ミサイルの開発を進め11日の試射成功で実戦配備の段階に入った。

明らかに米国は、極超音速ミサイルの開発において中ロだけでなく朝鮮にも後れを取っている。中ロに遅れメンツをつぶされ、さらに朝鮮にも後れろことは耐えがたい屈辱であろうことは想像に難くない。(了)

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