メモを取りながら野球教室 巨人コーチが伝えたかった「書き留める」ことの大切さ

野球教室を行った巨人・矢貫俊之3軍投手コーチ【写真:本人提供】

昨年末、巨人・矢貫3軍コーチが故郷の福島で行った野球教室で実施した取り組み

野球ノートは少年野球の成長に欠かせぬ必須アイテムとなってきた。書き方はそれぞれだが、巨人・矢貫俊之3軍投手コーチは昨年末に故郷・福島の喜多方市で喜多方ボーイズの選手たちに行った野球教室で「ペン」と「ノート」を準備してもらった。そこに記されていたのは感謝の言葉と子どもたちの成長だった。

【実際の写真公開】「絶対忘れないで練習します」巨人・矢貫コーチが受け取った子どもの思いが伝わる野球ノート

12月18日。矢貫コーチの故郷は雪だった。そのため室内での実施になったが、熱気に満ち溢れていた。キャッチボールをはじめ、投球動作を指導した。一見、普通の野球教室に見えるが、メニューの間には、子どもたちがメモを取る時間があった。

矢貫氏はその狙いを説明した。「私が1日や2日くらい見て、アドバイスをしたところで、子どもたちを上手くすることはできません。成長するかどうかは、それを『継続』できるかどうか。また、継続できる練習を私がその子にきちんと提案できるかどうかだと思っています」。提案をできたとしても、正解なのか、不正解なのかは、その子が実際に体感してみないことにはわからない。何も始まらない。継続することもできない。

子どもたちには練習メニューの意味や、アドバイスを受けてどうだったのか、自分に合っていたかどうかを書いて、残してもらった。投げづらかったのか、それとも投げやすかったのか……。都度、聞いてまわり、子どもたちはメモを取ることの繰り返しだった。それは自然と反復練習になっていた。

変化がすぐに表れた選手もいた。

「ある選手から『さっきは突っ込まないで投げられたのに、力を入れると突っ込んでしまう』と聞きました。私は一言も『突っ込んだらダメだよ』『力を入れて』と言っていないにもかかわらず、投げづらいこと=(イコール)突っ込むこと。力み=投げづらい、と勝手に体感するようになっていました。この感覚が芽生えれば、選手は勝手に反復して練習を行なってくれるようになると思うんです」

子どもたちから受け取った言葉に感動、4年後の巨人入りも?

昨年のシーズン途中から、巨人の3軍投手コーチとなった。育成選手が多いが、子どもたちに伝えている根幹は巨人のユニホームを着ている選手たちに教えていることと、ほとんど変わらなかった。体の軸、腕の振り方、頭の位置……。子どもたちの表情は真剣そのものだった。

後日、チームを通じて、書いたノートの写真が矢貫コーチのもとに送られてきた。そこには練習メニューをはじめ「できたこと」「できなかったこと」が書かれていた。「下半身がうまく使えるようになりました」「今日、教わったことは絶対に忘れません」。筆圧が強くなっていたのは容易に想像ができた。

感謝の言葉も添えられていた。メッセージだけでなく、野球教室終了後、参加した喜多方ボーイズの中島快生くんからは「プロ野球選手になるのが夢です。教わったことを活かして守備は坂本選手、打撃では岡本選手を超えるような選手になりたいです」と力強い言葉を受け取った。また、キャプテンの今川映汰くんからは「強い球を投げれるようになりました。(高校を卒業する)4年後、お世話になります!」と巨人入団を熱望された。

矢貫コーチは「開催できて本当によかったです。子どもたち、関係者の皆さまに心から感謝したいです。みんなの上手くなりたいという気持ちが伝わってきました。その姿を見て、僕も熱くなってしまいました」と、雪が降り続ける故郷で一緒に汗を流した。

また「私も雪が降るとやれる練習量や場所が限られてしまい困っていました。そんな期間中でも質を重視し、反復して行える練習メニューや方法を伝えました。この中から将来、ジャイアンツのエースになってくれる選手が育ってきてくれることを期待してます」と力強いメッセージを届けた。

共に過ごした時間だけでなく、思いを書き綴ったノートも一生の宝物になった。

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