ツシマヤマネコの餌場保全へ 「保護区」の植生後退 守る会、3月から植樹

植生が後退し、荒れた保護区を歩くツシマヤマネコ=2020年9月、対馬市上県町(ツシマヤマネコを守る会提供)

 対馬島内に推定90~100匹生息するとされ、絶滅が危惧されている国の天然記念物ツシマヤマネコの保護活動をしている長崎県対馬市のNPO法人「ツシマヤマネコを守る会」(山村辰美会長)は3月から、同会が独自に設置したツシマヤマネコの「保護区」で植樹活動に取り組む。常緑樹400本を植樹し、ヤマネコのすみかや餌場の保全につなげる考えだ。
 守る会は1993年に発足。島内外の会員約300人で構成している。保護区は、対馬北西部の上県町佐護地区の75ヘクタール。守る会が10年ほど前から会費や寄付金、補助金で民間から買い取った山林で、ヤマネコの水飲み場などを設けるなどしてきた。
 しかし近年、イノシシやシカによる食害に加え、塩害により保護区の植生が後退。かつて生い茂っていた草木が徐々になくなり、ヤマネコの身を隠す場所や、ネズミやモグラといった獲物となる小動物が減っていた。
 植樹するのは、ヒノキ科のカイヅカイブキとレンプクソウ科のサンゴジュ合わせて400本。いずれも民家の生け垣や街路樹によく使われ、丈夫な樹木として知られているという。
 植樹の資金確保のため、守る会は10月からクラウドファンディング(CF)で寄付を募り、約500万円を集めた。資金は苗木の購入費用に加え、作業に使う重機のレンタル代や作業員の人件費などに充てる。
 守る会の羽根佳雄理事(60)は「山林を増やすことはヤマネコだけでなく他の生物や人間にとってもいいこと。こうした植樹活動は守る会だけでは限界があるので、島内で広がってほしい」と話す。


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