2020年夏のコロナ流行、遺伝子データ保管せず 「米軍由来を否定」検証困難に 沖縄県と感染研

 2020年夏に沖縄県内で流行していた新型コロナウイルスが米軍由来ではなく東京と同じグループと県などが説明していた件で、根拠となる資料が県保健医療部にも国立感染症研究所にも保管されていないことが13日までに分かった。調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP、河村雅美代表)の調査で明らかになった。
 調査した河村代表は「米軍基地からの移入の否定が、対米軍基地の感染対策を緩めさせた側面も考えられることから検証が必要だ。だが、解析した機関にも、依頼した県にも『東京由来』の根拠を確かめる科学的データが保管されておらず問題だ」と指摘した。
 ウイルス遺伝子解析は、県が感染研に依頼していた。国の専門家組織座長の脇田隆字感染研所長は20年8月、記者会見で米軍との関連を問われ「ゲノム解析で、今回の流行は沖縄も含めて東京から由来したものだと理解している」と答えていた。県も定例の記者説明で同様の説明をした。
 根拠となった資料を河村氏が県と感染研に請求したところ、双方とも文書を保管していないと答えた。記録がなく、実態を検証できない状態となっている。
 解析結果は、20年8月23日の県専門家会議でも議題となった。県によると、同会議の資料一式は残っているが、ゲノム解析に関する資料のみ保存されていない。
 県担当者は取材に「担当者が代わっており、正確な事実関係は分からない。感染研とのやりとりも残っていない」と説明した。その上で「(提供側から)会議で使用後に回収して保存しないよう求められることがある」と述べた。一方、感染研担当者は「感染研から指示することはない」と否定した。
 (明真南斗)

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