干拓に尽くした先人たたえ 演劇「月の港の干拓」23日上演 諫早の住民グループ

公演に向けて練習するメンバーと演出を手掛ける藤本さん(左)=諫早市、いいもりコミュニティ会館

 長崎県諫早市飯盛町の住民グループが江戸時代、地元の干拓事業に尽力した松本四郎左衛門の偉業を伝える劇「月の港の干拓」(約1時間40分)を、23日午後2時から同町のいいもりコミュニティ会館で上演する。
 上演するのは、同町の住民らでつくる「地域演劇で町づくり」実行委。同実行委によると、「月の港」と呼ばれた遠浅の入り江を干拓し、新田を造成するため、1698(元禄11)年、江ノ浦川下流の最狭部に「井樋堤塘(いびていとう)」(石積みの堤防と水門)が築造。佐賀藩諫早領の家臣だった四郎左衛門がその指揮を執ったとされる。劇では、村人たちと郷土発展の礎となった干拓事業に取り組んだ四郎左衛門の労苦、功績を描く。
 作・演出を同実行委代表の藤本八重子さん(72)が担当。園児から80代までの約50人が演者やスタッフとして参加する。同実行委は2005年、「地域の課題にスポットを当てた演劇を通じ、住民自ら地域づくりを考えていこう」と発足。四郎左衛門や井樋堤塘を題材にした作品はこれまでも上演してきたが、今回は新たなシーンも盛り込んだ「総集編」(藤本さん)と位置付けた。主役の四郎左衛門を時代に応じて3人が演じるほか、初めて子どもたちがナレーターを務める。
 関係者は昨年9月末から週2回の練習を重ねてきた。若い頃の四郎左衛門を演じる佐田信也さん(55)は「井樋堤塘があった場所に実家が建っていた。身近な存在で愛着を感じる。人を引っ張っていった四郎左衛門を演じることは難しいが、人々の営みが今につながっているということを伝えたい」。ナレーターの一人、市立飯盛中2年、馬場春佳さん(13)は「初めて劇に参加して、大人たちの演技がすごいなと驚いた。出演者の皆さんに負けないよう頑張りたい」と意気込む。
 入場無料。新型コロナウイルスの感染状況次第では無観客での上演とするが、その場合でも公演の様子を収録し、DVDにして地元の学校や市内の図書館などに寄贈する予定。藤本さんは「人のために何かに尽くす人間の強さ、生き方を語り継いでいきたい」と話す。
 問い合わせは藤本さん(電0957.48.1938)。


© 株式会社長崎新聞社