「閉校」で飛ばした風船が紡いだ縁 矢板市豊田小に茨城・常陸大宮市からエール

統合記念行事で行われたバルーンリリース

 本年度末で147年の歴史に幕を下ろす栃木県矢板市豊田小から飛ばされた風船が、遠く茨城県常陸大宮市との縁を紡ぎ、児童や教職員の心を温めている。同市で風船を受け取った市民の手紙をきっかけに、12日、同市の鈴木定幸(すずきさだゆき)市長から特産の枝物「奥久慈桜」が同校に贈られた。碓氷(うすい)勉(つとむ)校長(58)は「子どもたちにエールを送ってもらい、とてもありがたい。思い出になるよう大事に育てていきたい」と話している。

 同校は昨年11月、東小への統合記念行事を行い、全校児童43人と保護者らがマリーゴールドの種を付けた色とりどりの風船300個を青空へと放った。

 そのうちの一つが市から直線距離で30~50キロ離れた常陸大宮市に到着。12月下旬、「緑色の風船と共にマリーゴールドの種が届きました」と題された匿名の手紙が同校に届いた。

 手紙によると、送り主には2人の子どもがおり、在学中に小学校が閉校になった。庭先に風船が届いた縁がうれしくなったとして、「閉校はとても寂しいことですが、そこで育った人々の、その後の人生の中で生き続けていけるように、残りの時間を精いっぱい楽しんでほしい」などと同校を激励した。

 何とかお礼がしたいと考えた碓氷校長は、市民からの手紙に励まされた旨などをつづり、鈴木市長宛てに郵送。一連の経緯に感銘した鈴木市長から奥久慈桜が贈られることになったという。

 鈴木市長は「皆さんの記憶と共に歴史に刻まれた豊田小は永遠。頑張れ豊田っ子」と、児童たちにメッセージを寄せた。

 奥久慈桜は週明けから子どもたちの教室に飾られる予定。碓氷校長は「子どもたちには、皆を応援してくれるたくさんの人がいることを伝えた。相手を思いやれる優しい大人になってほしい」と目を細めていた。

「子どもたちのいい思い出になる」と話す碓氷校長

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