事故前日に1人でトラ収容作業 獣舎への扉開け忘れとの見方 那須サファリパーク・飼育員負傷事故

飼育員がトラに襲われる事故があった「那須サファリパーク」=5日午前、栃木県那須町

 栃木県那須町の那須サファリパークで飼育員3人がトラに襲われ負傷した事故で、飼育員が事故前日にトラを獣舎へ収容する際、マニュアルに定められた2人ではなく、1人で作業していたことが14日、園への取材で分かった。この飼育員は「トラを獣舎に入れたか覚えていない」と話しており、園はトラ用通路と獣舎の間の扉を開け忘れ、トラを獣舎に収容しなかった可能性があるとみている。飼育員がトラ用通路を通ることが常態化していたことも判明。県警は複数の要因が重なって事故につながったとみて調べている。

 園によると、事故前日の今月4日、2人の飼育員が展示スペースと獣舎をつなぐトラ用通路までトラを入れたが、1人は別の動物を収容するため「獣舎に(餌の)肉を置いてトラを入れて」と指示し、先にトラ舎を出た。もう1人は肉を置いたが、獣舎との間の扉を開けたかどうか覚えていないという。

 マニュアルでは、2人で獣舎の中に入ったことを目視で確認することになっていたが、確認が不十分となった可能性がある。トラが獣舎に入るのを嫌がるなど異常事態があった時は日誌に記録するが、そのような記録もなかった。

 事故時、獣舎の餌は残った状態で、通路にはトラのフンが落ちていた。扉はトラが開閉できる構造ではない。これらのことから、園は飼育員が通路と獣舎の間の扉を開けなかったことで、トラが一晩中、通路に残されたとみている。

 事故当日の5日朝は、女性飼育員がトラ舎内の獣舎を抜けて展示スペースへ向かおうとして、トラ用通路でトラに遭遇した。捜査関係者によると、園関係者は県警の聴取に対し「展示スペースへトラ舎を抜けて向かうこともよくあった」などと話しているという。

 トラ舎を抜けずに展示スペースへ出入りするための外部からの扉は壊れて使えない状態だったことも判明。県警はこうした複数の要因が重なって事故につながったとみて、業務上過失傷害容疑で捜査している。

© 株式会社下野新聞社