PCR受検者「職場に迷惑掛けられない」「風評被害が怖い」 県内の民間検査センター【ルポ】

多くの人が訪れている民間のPCR検査センター=長崎市浜町

 とどまることを知らない新型コロナウイルスの感染第6波。長崎県内の新規感染者数は14日、2日連続で過去最多を更新した。変異株「オミクロン株」の市中への広がりを受け、県は7日から県内在住者対象に検査を無料化。「職場に迷惑を掛けられない」「風評被害が怖い」。検査所は、不安や戸惑いを抱えた人たちであふれていた。
 13日午前9時45分。長崎市浜町のアーケード。ビルの一角に昨年末に開設された民間のPCR検査センターに受検希望者が次々と吸い込まれていく。「予約画面を見せてください」。マスクにフェースシールド、不織布の青いエプロンをしたスタッフが一人一人に確認し室内に案内していた。
 入り口まで出てきてくれた現場リーダーのスタッフにあいさつをすると、「きょうも予約が多くて。バタバタであまり対応できないかもしれませんが」と申し訳なさそうに言って、室内に戻っていった。
 同10時20分。若い女性が検査を終えて出てきた。女性は、9日にあった長崎市の成人式に出席。夜は居酒屋で開かれた同窓会にも参加した。仕事は介護士。高齢者施設で働いている。職場から、1週間休んで、検査で陰性を確認するよう指示を受けたのだという。「入所者の皆さんを守らないといけないので検査は当然。明日までには結果が分かるので安心して仕事に戻れます。無料はありがたい」。陰性を信じ、笑顔で会場を後にした。
 同31分。30代男性は、別居の家族が濃厚接触者になり検査を受けに来た。「10日に一緒に食事をしたから念のために。職場に迷惑は掛けられないので」
 同45分。派手なスーツ姿の男性に声を掛けてみた。「職場で何人か出ちゃって。急いでるんで」。どこか、人目を気にするようなそぶりで小走りで去って行った。
 同11時5分。今度は若い男性2人組。接客業という1人が話してくれた。「数日前に行った飲食店のスタッフが陽性と聞いたので。お客さんに迷惑を掛けられない。陰性が分かるまでは自宅待機です」。記者が「大変ですね」と相づちを打つと、「(都会に比べ)長崎はまだ少ないから、感染すると、人にも会社にも風評被害が出ると思う」とぽつり。
 同25分。作業服を着た男性5、6人が続々と会場から出てきた。建設会社の同僚だという。中には経営者の男性も。「一緒に働いている従業員が濃厚接触者になってね。(職場の)12人が2会場に分かれて検査を受けた。仕事があるんで今から戻ります」。「陽性だったら?」と記者が尋ねると、「症状がなかったら仕事を続けたいが…。いろんなことを想定しないといけないですね」。表情が少し曇った。
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 無料でPCR検査や抗原検査を受けられる施設は13日時点で県内48施設。1日最大1200件の受検が可能で31日まで実施予定。県は▽帰省などで県外と往来した人▽県外から帰省などで来県した家族や友人と接触した人-は積極的に受けるよう呼び掛けている。施設は県のホームページで確認できる。


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