伊是名島に「除夜の鐘」再び 首里から27年ぶり帰郷、住民ら鐘付き台つくる

 【伊是名】年越しに伊是名村諸見区の高良孝太郎さんの自宅で管理されている鐘で除夜の鐘の鐘つきが行われた。大みそかの12月31日午後11時半ごろから、年が明けた後まで、訪れた人たちはそれぞれ願いを込めて鐘をついた。

 この鐘はもともと1952年から6年間、島の中心の丘の上にあった伊是名聖霊教会の鐘で、ほとんどの家庭にまだ時計がない当時、除夜の鐘や、毎日時計の代わりに時を告げるなど村民に親しまれてきた。
 教会が閉鎖された後は村内の資料館(現在の村ふれあい民俗館)に保管されていたが、1994年に那覇市の首里の聖アンデレ教会の新築の際に村から贈られた。本島で司祭をし、定年後島に戻ってきた高良さんが、村民の思い出の鐘を島に戻したいと、首里聖アンデレ教会に相談し、再び昨年島に帰ってきた。紆余曲折(うよきょくせつ)を経た鐘だ。
 帰ってきた当初は敷地内に野ざらしで置いていたが、親戚や仲間内で盛り上がり、話が整い、立派な鐘つき台が完成し、12月7日に鐘の設置も完了した。高良さんは今後は風雨にさらされないよう、村出身者に寄付を呼び掛け、屋根も設置する予定だ。また、今回はありあわせの鐘つき棒だったので音が高めで島内に聞こえない場所もあった。戦後当時のように低い音で島中に音が届くように、今後は長く大きな鐘つき棒にしたいとも思っている。
 高良さんは「伊是名の歴史の一役を担った鐘を、こうしてまた伊是名島で皆さんが楽しくついてくれてうれしい」と笑顔で話した。
 村出身で諸見区の実家で年末年始を過ごした山川健二さんは、鐘が鳴っているのを聞いて、慌てて鐘がなる方に駆け付けた。山川さんはこの鐘への思いを「幼いころ、島の教会にあった鐘の音をまた、五十数年ぶりに聞いて感慨深い。5年前に首里の教会の庭にあるのを偶然見掛け、この鐘の音を再度伊是名で聞きたいと伝えたが、まさか本当に実現できるとは思わなかったと喜んだ。また、大みそかの日に、島の子どもたちが、受験合格やスポーツの夢を言いながら、鐘をつく姿はとても感動した。コロナ禍の中、希望の鐘となり、とても良い大みそか、正月になった」と振り返った。
 離島で除夜の鐘が聞けるのは珍しく、新しい年越しのスポットとして、村民にも喜ばれている。
 (比嘉陽子通信員)

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