住宅耐震改修が堅調、田辺市 補助金申請が増加

田辺市の住宅耐震化補助実績

 和歌山県田辺市で、補助制度を活用した木造住宅の耐震改修が増えている。本年度の補助件数は12月末時点で48件と、過去最多だった2019年度(65件)に次ぐペース。コロナ禍で戸別訪問など従来の啓発活動ができない中でも、堅調に推移している。

 阪神大震災では、1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅の多くが被害を受けた。直接死した人の9割近くが住宅や家具などの下敷きになったとされる。

 補助制度は、耐震基準が強化された2000年5月以前に建てられた木造住宅が対象。耐震診断を無料で受けることができ、耐震改修をする場合は設計と改修工事で最大116万6千円の補助がある。既存の建物を解体して、現地で建て替える場合も申請できる。

 市建築課によると、補助件数は16年度までは年間24件が最多だったが、17年度以降は連続して30件以上となっている。特に19年度は消費税増税前の駆け込み需要や住宅ローン減税などの影響で大幅に増加し、65件まで伸びた。

 20年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響もありいったん減少したが、本年度は再び増加に転じている。

 市の担当者は「近年増加している背景には、防災意識が高まっていることに加え、改修費用を抑える工法が広まってきていることがあるのではないか」と話す。

 市は本年度当初予算で補助金45件分(5247万円)を用意していたが、12月市議会で15件分(1749万円)を増額補正した。

 一方、長引くコロナ禍で、耐震化の啓発活動はままならない状況が続いている。

 市は08年度から、古い家屋に住む人に耐震診断と改修を直接呼び掛ける「ローラー作戦」を実施。町内会と協力して補助対象になりそうな世帯を戸別訪問する取り組みで、耐震診断件数は予算額上限の年間200件を維持するなど成果を上げてきた。

 しかし、感染拡大防止のため、現在はローラー作戦を中断。一部地域でチラシを配布したり、ホームページで周知したりするのみとなっており、耐震診断の申し込みも20年度120件、21年度(12月末時点)89件と減っている。

 市の耐震改修促進計画では、20年度で72.7%だった住宅耐震化率を25年度末までに88%以上に引き上げることを目標としており、担当者は「引き続き制度の周知を図っていきたい」と話している。

© 株式会社紀伊民報