婦人会館閉館へ 築100年、小説にも登場

 横須賀市立婦人会館(同市馬堀町)が3月末で閉館する。明治期の庭園付き別荘を改修した珍しい公共施設は、築100年を超えて老朽化が進んでいた。開設から35年余り、シニア世代の憩いの場として定着しており、閉館を惜しむ声もある。

 市教育委員会によると、同会館の前身は1907(明治40)年ごろ、旧佐賀藩士の一族が建てた別荘とされる。39(昭和14)年に浦賀船渠(せんきょ)の保養所となり増築され、80年に同市が買い取った。

 敷地面積2288平方メートル。青々とした芝生に大小の松の木が根付く和洋折衷の庭園は、住宅街の一角でひときわ目立つ。昭和初期、近くに借家住まいをした文人菊池寛が、小説「不壊の愛」に庭園の様子を描いたこともある。

 現在は一部2階建ての木造施設を無料で市民らに開放。茶道や和裁、編み物、囲碁などのサークル活動に利用されてきた。一方、趣味の多様化なども影響し利用者数は減少。2014年度は、5年前より2割減の6582人だった。

 同会館で30年以上、高校の同窓会を開いてきた三ツ橋久子さん(69)=同市根岸町=は、「同級生との思い出が詰まった場所だし、こんなにきれいな庭園のある施設は珍しい。残念のひと言です」と惜しんでいた。

 同会館は今月26日オープン予定の大津行政センター・コミュニティーセンター(同市大津町)の移転、新築に合わせて閉館が決まっていた。4月以降、解体を前提として売却予定だ。

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