米軍佐世保基地、コロナ感染対策の現状は 新変異株検査、 情報共有は不透明

外出制限などのコロナ対策について朝長則男市長に説明するアダムス司令官=13日、佐世保市役所(米海軍佐世保基地提供)

 全国各地の在日米軍基地で多数の新型コロナウイルス感染者が出ている。佐世保基地でも昨年末から感染者が増加。同基地関係者(軍人、軍属など)の累計感染者数は284人(14日時点)だが、このうち昨年12月28日からの発表数は185人に上る。こうした状況を受け、米軍基地では10日から不要不急の外出制限などが行われている。基地内の感染防止策はどうなっているのか。新変異株の検査の行方は。現状を探った。
 「しばらく休まないといけなくなった」。長崎県佐世保市の80代女性は、同じスポーツクラブを利用する米軍関係者からこう告げられ、外出制限が出されているのを実感した。街中で見掛ける外国人の姿は目に見えて減少している。しかしマスクをしていない外国人の姿が今も散見される。「(沖縄などでは)あれだけ感染者が出ていたのに」と外出制限実施の遅さを指摘する。
 13日、同基地のデイビッド・アダムス司令官が佐世保市役所を訪れた。朝長則男市長に外出制限などのコロナ対策を説明するためだ。朝長市長は制限の終了後も「感染対策の徹底を」と、求めたという。
 同基地では日本人ら約1800人(昨年12月時点)の従業員も勤務、基地関係者とは日々接している。20代男性基地従業員は、1日置きの出勤やテレワークといった対策例を挙げ「(基地では)対策をずっと続けている」と説明する。感染者が確認された際も徹底した濃厚接触者追跡調査が直ちに行われ、感染者との接触があった場合など、必要に応じて上司などから情報がもたらされるという。
 一方で40代の男性従業員は「どこの部署で感染者が出たのか情報が回ってこない。情報は共有してほしい」と語る。いまだにマスクをしていない米軍人が基地内で見られるとして「マスク着用は徹底してほしい」と訴える。
 県内でも、陽性となった基地関係者との接触や接触の疑いのある同基地従業員らの感染も判明しているが、他県の基地のような爆発的な感染には至っていない。基地従業員でつくる全駐留軍労働組合長崎地区本部(全駐労長崎)の野口治郎書記長は基地従業員から「『基地で働いているが、大丈夫なのか』という目を向けられる」といった相談が寄せられていると明かす。従業員とそれ以外の市民との間に壁が生まれないか。それが心配だという。
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 基地関係者の感染が判明すると米軍から報道発表が行われる。しかし感染の経緯など細かい点については明らかにされない。こうしたことも市民に不安が広がる要因の一つになっている。自営業の30代男性は「(街中などで)外国人を見ると身構えてしまうというか…。基地での感染拡大が起きるまで、そんなことを意識したことはなかったのだが」と吐露する。
 在日米軍を巡っては、急拡大している新変異株「オミクロン株」の検査も焦点。外務省によると米側は在日米軍施設では新変異株かどうかのゲノム解析ができないため、検体を本国へ送り解析を進めているという。
 外務省は米側に日本の施設での解析を提案したが「個人情報」を理由に断られた。解析結果が注目されるが外務省は「日本に結果が共有されるか否かは何とも言えない。調整中だ」と言葉を濁す。
 新変異株の検査については佐世保市も国に対し昨年末、米軍に要請するよう求めた。外務省によると米側の回答は「検討する」に留まっている。


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