もしつらいと思ったら、会社員が休養中や退職してもらえるお金、傷病手当や家賃補助どういう申請をすればいい?

長い人生、思いがけず身体を壊すこともあります。そんな時には、無理をせずしっかり休養をとるのも一つの選択肢。しかし実際に休むとなると、不安になるのは身体だけではなくお金のことも。日々の生活を安心して送るためには、生活費が確保されていることも大切です。

今回は、身体を壊してしまったビジネスパーソンが、勤務先を休んでいる間にもらえるお金や、退職してからもらえるお金についてお伝えします。


会社員なら、まずは有給休暇

企業に勤務している会社員の場合、会社を休んでも有給休暇がありますので、いきなり収入がなくなる心配はありません。有給休暇の日数は勤続年数などによって決められていて、使い切れなかった分は翌年に繰り越しができる場合もあります。入社時に受け取っている「就業規則」などで早めに確認をしておく安心です。

年10日以上有給休暇の権利がある会社員に対して、企業側は最低でも5日以上は有給休暇を現実に与えることが法律上義務付けられています。休むことに遠慮する必要はありませんが、社会人としてのマナーは守るようにしましょう。

まずは上司に状況を説明して理解を得ておくと、その後がスムーズです。身体のことなので、あまり細かく言いたくないかもしれませんが、体調不良のため病院に行きたい、検査を受けるために早退したいなど、差支えない範囲で話しておくことで柔軟に対応してくれることもあります。

有給休暇を利用してしばらく休んだ後、仕事に復帰できる場合もあるでしょう。その際、有給休暇をすべて使い切ってしまうことはおススメできません。ゼロになってしまったら、次の有休が付与されるタイミングまでは有休はなし。もし休むことになれば、欠勤扱いになってしまいます。

復帰する場合は、有給休暇は少し残しておくといいですね。

傷病手当は退職前に利用開始

有給休暇を利用して休んでも体調が復活しない場合は、傷病手当を利用します。

傷病手当は、会社を連続して3日休んだら4日目から給付になります。「連続して休む3日」には、有給休暇も含められます。ですから、有休で10日休んだら、11日目から傷病手当金が受け取れることになります。

傷病手当の金額は、給料の約3分の2。2022年1月からは、通算1年6カ月受け取れます。

従来、傷病手当金は支給開始日から最長1年6カ月間が受け取れる期間でした。手当金を受け取ってから一時的に働けるようになり出勤したら、その期間の手当金はありません。その後また具合が悪くなり休んだら手当金は受け取れますが、支給開始日から1年6カ月間ですから、1年6カ月分の手当を受け取れないこともありました。

手当金を受取り始めてから、一時的に給料をもらえる時があっても、その期間を除いて、合計で最大1年6カ月分の手当を受け取れるようになります。体調が良くなって、「仕事ができそう、でもまた休むことになるかも」といったとき、手当金の面で損をする心配がなくなるのは助かりますね。

ただし、社会保険の保険料は従来通り支払う必要があることに注意しましょう。傷病手当は、社会保険から支給されます。つまり、社会保険に加入していることが前提です。それには、社会保険の保険料を支払わなくてはいけません。

社会保険料の金額は、給与明細に載っています。給与明細には、大きくわけて「勤怠」「支給」「控除」の3つの欄がありますが、社会保険料は「控除」の「健康保険」です。給与の場合、社会保険料は天引きされていますが、傷病手当では自分で振り込むなどして支払います。請求がきてから慌てないようにしておきたいですね。

傷病手当を受け取っている間に退職しても、継続して傷病手当を受け取れる場合があります。条件は、主に次の2つです。

・退職までに継続して1年以上、社会保険に加入していること
・退職する日に傷病手当金を受けているか、受け取る条件を満たしていること

ざっくり言うと、1年以上勤務した会社をやめる時、すでに傷病手当金を受けていたら、やめた後も受け取れる可能性は高い、ということになります。

ただし、退職する日に出勤してその分の給与があると、傷病手当を受け取る条件を満たしていないことになり、退職後に継続して受け取ることができなくなります。また、退職後に働けるようになった場合には受け取れなくなり、その後また働けない状態にになっても受け取ることはできません。

退職した後でも、退職したときに傷病手当金を受け取れる条件を満たしていれば受け取ることは可能ですが、会社に給与の支払いがなかったことや、3日以上連続で休んでいたことを会社に証明してもらう必要があります。

できれば、退職前に傷病手当の受け取りを開始しておくといいでしょう。

傷病手当金の申請書

傷病手当を受け取るには、支給申請書を提出しますが、ほとんどの場合勤務先から書類を受け取ることになるでしょう。本人が準備する書類は3枚です。

1枚目には基本的な事項を記入します。保険証の記号・番号、生年月日、氏名、住所、そして、傷病手当金を受け取る金融機関の口座番号などです。

保険証はいつも持ち歩いている人が多いと思いますが、口座番号はキャッシュカードを持っていないとすぐにはわからないでしょう。勤務先で記入するよう言われたら、スムーズに手続きできるよう準備しておくといいですね。

2枚目には、傷病手当金を受けることになった原因や状況について記入します。傷病名・休んだ期間などが、事業主(勤務先)や医療機関の記載と違いがないように気を付けてください。

3枚目は、医療機関に記入してもらう書類です。病気やケガの治療・療養のため、仕事ができないことを証明する書類になります。

そのほか、事業主(勤務先)が記入する書類として、勤務日数などの状況を証明するものがあります。

家賃の負担には家賃補助

生活費のなかで大きなウエイトを占める家賃は、病気療養中には痛い出費です。

特に、勤務先から福利厚生として住宅手当などの家賃補助があった場合には、大きな痛手になるでしょう。そんな時、まずは住まいの自治体の家賃補助が利用できないか、確認してみるのがおススメです。

自治体のサービスは住民のためのものですが、自分から申請しなければ受けられません。ホームページや区報・市報などをチェックしましょう。自治体の家賃補助は、受けられる条件が自治体によって異なります。家族構成、収入、居住の年数、家賃の金額などが条件になっていることが多いようです。

そのほか、失業等により住居に困っている方には、住居確保給付金を利用できることがあります。
住居確保給付金は、2年以内の離職などで住居を失っている方、または喪失するおそれのある方が対象です。賃貸住宅の家賃を補助して住むところを確保、そして就職の支援もしてくれる制度。申請はそれぞれの自治体の自立相談支援機関にします。

補助される金額の上限は、自治体ごとに決まっています。
たとえば、東京都杉並区であれば、下記のとおりです。

住宅確保給付金は、世帯ごとに申請をします。世帯人数によって補助される金額が変わります。補助される金額は、家賃上限額までの金額です。たとえば、一人暮らしで家賃が6万円なら、上限額の5万3,700円が補助になります。ただし、収入などの条件があります。

世帯人数によって基準額が定められ、直近の月の世帯収入合計額が、家賃と基準額の合計額=収入基準額の上限額よりも少ない場合が給付の対象です。また、世帯の預貯金合計額が、基準額の6カ月分を超えていないことも条件です(ただし100万円を超えない額)。

補助が決まると、原則3カ月の間、補助金が自治体から不動産業者などに直接支払われます。延長は2回まで可能なので、最大9カ月間です。

補助されている期間は就職支援が受けられます。ハローワークに登録をして、求職活動をすることも必須です。2020年4月から一時ハローワークへの登録、求人の申込みが不要となっていましたが、2021年1月1日から必要な条件に復活しています。

つまり、働きたいけれど働けない、収入は激減、貯蓄も少ない、という方が対象の制度です。

失業保険は延長申請を

働きたいけれど働けない場合は、失業保険も申請できます。

失業保険は、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」という人が対象。ですから、病気やケガの治療、療養のためにすぐには働けない人は受け取れません。

しかし、諦めなくても大丈夫です。その場合は、延長申請をしましょう。病気などが原因で、30日以上継続して職業に就くことができなくなったら、できるだけ早めに申請します。最長3年間まで失業手当受給開始を延長する事が出来ます。

ただ、病気療養中だと自分でハローワークまで行かれないことも多いと思います。そのため、受給延長申請は郵送または委任状を持った代理人でも手続きが可能。申請方法をあらかじめ電話で聞いておくと、準備するものがわかって便利です。


身体を壊して働けず、お金も心細い。そんな時にはまず、公的な社会保障です。

ひとりで抱え込まず、市役所や区役所、信頼できる友人、家族に相談してください。ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士の無料相談があれば、そちらも利用してみてください。

困ったときはお互い様。時には周りを頼ることも大切ではないでしょうか。

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