休廃業・解散企業は前年から1割減の4.4万件、廃業前決算「黒字」が大幅減【2021年】

 2021年(1-12月)の「休廃業・解散」企業(以下、休廃業企業)は、全国で4万4,377件(前年比10.7%減)だった。過去最多だった2020年(4万9,698件)から、1割以上減少した。
 コロナ禍での政府や自治体、金融機関の強力な資金繰り支援で、2021年の企業倒産は6,030件と1964年(4,212件)以来、57年ぶりの低水準となった。こうした支援策が今後の事業活動の判断を先送りし、休廃業の減少につながった可能性がある。ただ、2021年の休廃業は、統計を開始した2000年以降、2020年、2018年(4万6,724件)に次ぐ、3番目の高水準だ。また、倒産の7倍以上の企業が休廃業している。代表者の高齢化などを背景に、休廃業への対応が急務である状況に変わりはない。
 休廃業企業の当期損益は、2021年は「黒字」が56.5%(前年比5.0ポイント減)と大幅に下落し、初めて6割を割り込んだ。コロナ禍で事業環境が悪化しながら、給付金や貸付金などコロナ関連支援で延命している企業が多い実態が浮かび上がる。

* ※東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから、「休廃業・解散」が判明した企業を抽出した。
「休廃業・解散」は、倒産(法的整理、私的整理)以外で、事業活動を停止した企業と定義した。

休廃業解散

業歴別 業歴20年以上の休廃業・解散が目立つ

 業歴別の構成比は、最多は10年以上20年未満の21.6%だった。次いで、30年以上40年未満の15.8%。100年以上は0.03%にとどまった。
 業歴20年未満は48.2%で、前年(49.4%)より1.2ポイント減少した。一方、30年以上40年未満は15.8%(前年14.6%)、50年以上100年未満11.3%(同10.7%)など、業歴の長い企業に休廃業がシフトしている。

産業別 9産業で減少

 産業別では、10産業のうち農・林・漁・鉱業を除く9産業で減少した。
 最も多かったのは、飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業他の1万4,071件(構成比31.7%、前年比9.9%減)だった。以下、建設業7,567件(同17.1%、同7.8%減)、小売業5,298件(同11.9%、同14.1%減)と続く。
 産業を細分化した業種別(45分類)では、宿泊業が293件(前年比20.5%増、前年243件)で大幅に増加した。また、医療,福祉は1,542件(同0.1%増、同1,540件)でわずかに増加した。飲食業は1,642件(同5.2%減、同1,733件)だった。

休廃業解散

損益別 黒字が初の6割割れ

 休廃業する直前期の決算では、2021年は当期損益の黒字は56.5%だった。前年から5.0ポイントダウンし、2000年に統計を開始して以来、初めて60%を割り込んだ。
 「黒字率」は、2000年は70.0%で、2001年には73.0%に達した。その後、緩やかに下降線をたどり、2010年以降は60%台前半で推移していた。
 2017年以降、4年連続で61%台だったが、2021年は一気に60%を割り込んだ。コロナ禍での経営環境の激変が損益に大きな影響を与え、休廃業の決断を促した可能性が浮かび上がる。

* ※直前期は、休廃業・解散から最大2年業績データを遡り、最新期を採用した。

代表者年齢 60代以上の構成比が85%を超える

 休廃業企業の代表者の年齢別(判明分)は、70代が最も多く42.6%を占めた。以下、60代の23.3%、80代以上の20.0%と続き、60代以上が86.0%を占めた。60代は前年比1.2ポイント減少したが、60代以上の構成比は前年より1ポイント以上増加した。
 平均年齢は71.0歳(前年70.2歳)、中央値は72歳(同71歳)だった。
 承継支援への取り組み強化もあり、徐々に60代の事業承継が進みつつある。だが、70歳以上になると事業継承への時間的制約や、事業譲渡先も見つからないなどの理由で廃業以外の選択を失っている恐れがある。

 2021年の「休廃業・解散」企業は4万4,377件で、過去最多を記録した前年(4万9,698件)から10.7%減少した。前年は先行き不透明なコロナ禍の急速な広がりが休廃業の決断を促す契機となったが、その後の持続化給付金や休業協力金、実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)、新型コロナ特例リスケジュールなど、矢継ぎ早に各種支援策が実施され、事業継続の判断を遠のかせ、休廃業の大幅減少につながったとみられる。
 ただ、今後の状況は予断を許さない。休廃業企業の損益が悪化しているからだ。2021年の休廃業企業の当期損益をみると、「黒字」が56.5%(前年61.5%)と一気に60%を割り込んだ。コロナ禍で外出自粛や人流抑制、サプライチェーンの乱れなど、未曾有の出来事が損益に大きな影響を与えたことが改めて浮き彫りになった。これまでは業績が悪化して負債が膨らむ前に廃業を決断する流れがあったが、変化が生じている可能性がある。
 政府や自治体、金融機関の事業承継に向けた取り組みは、「稼ぐ力」のある企業の廃業は地域経済や国力にネガティブなインパクトを与えるとの視点に立っていた。だが、今回の調査で、休廃業企業の稼ぐ力そのものが大きく低下していることがわかった。政府は、事業再構築などウィズコロナ、ポストコロナを生き抜くための事業転換を支援する政策を打ち出しているが、休廃業の危機にさらされている企業の経営者年齢は高く、再構築意欲を失っていることも想定される。
 コロナ禍で取り巻く環境が大きく変わり、地域経済や雇用・サプライチェーン維持、技術承継の観点のみではカバーしきれない面もありそうだ。ライフステージ後期の企業への支援は、経済的側面だけでなく、高齢の経営者や従業員の生活保障を含めた視点も加味して議論する時期に差し掛かっている。

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