大人の「理屈」は子どもの「不快」になる危険性 見直したい少年野球の練習方法

MTXアカデミー・木村匡宏氏【写真:荒川祐史】

少年野球の練習方法に疑問、多くのプロ野球選手を指導する木村匡宏氏が提唱

小学生からプロ野球選手まで、パフォーマンスコーディネーターとして選手を指導するMTXアカデミー・木村匡宏氏のもとには、指導を受けたいと全国から野球人がやってくる。そこで多くの悩みに耳を傾ける。保護者の関わり方、低学年の指導法、部員数の減少で起きている問題、受験……。聞くたびに「練習の仕方、まだまだ見直せます!」と思うことがある。

【動画】子どもに分かりやすい木村氏の指導「指のストレッチ編」

◇◇◇◇◇◇◇

MTXアカデミーには小学校の低学年から子どもたちが野球を学びに来てくれています。公園でキャッチボールができないことや、部員が集まりにくくなっている悩みはよく聞きますが、個人の心の奥底に耳を傾けると「本当はもっと、自分からいろいろやりたいのに、野球をやらされている子が多いんじゃないかな」と感じることがあります。

練習しにきてくれる子どもたちに「今日はどんな練習したいですか?」と質問すると、大人から「もっとこうしなさいって言われました」「ここがダメだって言われたので、それを直したいです」と指導者に指摘されたことだけを、直したいという子がとても多いんですね。

いい環境、いい関係で、伸び伸びと野球ができている子は「今日はこんな練習をしたいです!」と自分からやりたいことを教えてくれます。たまに、せっかくアカデミーにまでいらして、僕と練習をしているのに、うしろから「ちゃんとできてないぞ!」「もっとこうしなさい!」と声を出さずにはいられない保護者には、「お父さん、そんなに練習を止めちゃうと下手になっちゃいますよ!」と静かに見守って頂くことを促します(笑)。

指導者や、お父さんたちの気持ちもわかります。特に、低学年の子どもたちが、バットを振っても、なかなか当たってくれなかったり、キャッチボールをしようと思ったら、あっちにいったり、こっちにいったり、ボールをポロポロとこぼしたり……イライラが募るばかりです。

ただ、ちょっと立ち止まり、よく考えてみると、野球は、非常に高度なスキルを求められるスポーツなんです。

説明を聞いてくれない子は理解力がないのではない

私も子どもたちに野球を伝える立場として、とても役に立ったのが、子どもを“発達”という視点から、理解するということです。発達とは、脳機能の発達のことです。子どもたちの脳は、まだまだ未発達で、我々、大人の脳と全く違うものと理解した方がよいのです。

大人は、理屈から入りますが、子どもたちは、その理屈を理解できる段階にないのです。子どものために良かれと思って、投げることを教え込んでも、子どもたちにはほとんど届かないと思っていいです。大人が一生懸命、説明を重ねるほど、子どもたちの身体には“不快”な感覚が募って、しまいには、別の遊びにいってしまうかもしれません。

説明を全く聞いてくれない……。これは、その子に集中力と理解力がないのではなく、脳がまだまだ成長の段階なので、仕方のないことなのです。子どもたちは、“快”か“不快”を身体で感じながら、ものごとを覚えていきます。自分を客観的に見て、話を通して自分の動きを調整できるようになるのは、まだまだずっと先の段階です。低学年の子たちは、脳の発達の段階上、頭で理解するのではなく、身体で感じながら学んでいきます。大人もそのような理解が必要なのではないでしょうか。

○木村匡宏(きむら・まさひろ)
1979年1月11日生まれ、福島県出身。福島高校、慶大硬式野球部。一般企業やアスリートの競技力向上支援する施設での勤務経験を経て、現在、MTX ACADEMYチーフディレクター。最も力を発揮しやすい姿勢と言われる「パワーポジション」の重要性を説き、プロ選手から育成年代まで数多くの野球選手のサポートを行っている。

◇◇◇◇◇◇◇

【早期登録特典】プレミアムプラン無料体験実施中

ひとつの“キッカケ”で未来は変わる

野球育成 技術向上プログラム
「TURNING POINT」

https://tp-bb.jp

本気で野球に挑戦する親子へ向けた 野球育成 技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」が昨秋スタート。元プロ選手、アマチュア指導者、トレーナーなど、野球に熟知した各分野のプロフェッショナルたちが持つ、一流の技術やノウハウを「MISSION FILE(技術習得用データ)」「解説動画」として発信します。

【動画】子どもに分かりやすい木村氏の指導「指のストレッチ編」

メモを取りながら野球教室 巨人コーチが伝えたかった「書き留める」ことの大切さ

成長を促したのは「プライドのなさ」 山本昌氏が語る“50歳現役”の作り方

© 株式会社Creative2