30代夫婦2人の場合、老後に必要なお金は2000万円以上?実際に計算してみて計画を

「老後2000万円問題」本当に必要な金額は? 今回はDINKS(ディンクス)夫婦ともに30代(35歳)、共働き、子供なしのパターンを考えてみましょう。シングルのパターンと同様、必要となる将来の貯蓄額(目標金額)を「現在の貯蓄額平均」「収入・支出」「定年(65歳)までの期間」をポイントとして見ていきます。


共働き「ダブルインカム」は強い!

男女ともに30代であれば、職場の中でもある程度のキャリアを積んでいる年代。役職がついている人も少なくありません。収入もある程度安定している人も多いでしょう。

「ダブルインカム」の状態ですから、そもそもの収入が低い20代シングルや、教育費のかかるファミリーと比較すると、圧倒的に貯蓄はしやすそうです。

国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査結果」年齢階層別の平均給与を見ると、30代の平均給与は男性499万円(30代前半:470万円、30代後半:528万円)、女性(30代前半:370万円、30代後半:410万円)となっています。

それぞれの平均年収を足せば【894万円】。仮に税金で年収の25%が取られたとしても手取りは約670万円です。貯蓄をしながら、プライベートも充実させられそうです。

さらに、金融広報中央委員会が出している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」を見ると、30代世帯の金融資産保有残高平均額は【644万円】(中央値:423万円※1)、金融資産を保有していない世帯を含めても【591万円】(中央値:400万円※1)となっています。

二人以上世帯、なので必ずしもDINKSではありませんが、仮に子供がいてもこの金額を貯められているとすれば、子供のいない世帯ではもう少し平均や中央値が高くなるとみてもいいかもしれません。

参考までに「世帯類型別」の世帯主夫婦のみ(年代の区分けはしない)で見ると【1,756万円】(中央値:900万円※1)にもなります。

40代、50代のDINKSも含まれているので、30代でこの金額にはならないでしょうが、「貯める力」があることに変わりはありません。

※1「中央値」年収が低い順(高い順)に国民を並べたときに丁度真ん中になる人の年収を表しているため、一部の富裕層の年収は中央値に影響せず、中央値は「普通の人」の生活水準により近くなる。

「持ち家」か「賃貸」か。不足額は「2000万円」以上に?

先ほど「貯める力」と書きましたが、それぞれ事情があっても、2人で行動することができます。転勤や転職など、夫婦のライフスタイルの変化が起きても特に問題はないでしょう。二人の趣味や個々のしたいことなどにお金、時間を割きやすいともいえます。

次に支出の観点から考えていきます。

支出の中で外すことのできない一つが「居住費」です。30代の持ち家率は約4割程度と言われているため、半数以上が賃貸になります。

同じエリアに住んだ場合で、賃貸と持ち家での支出の差はどれくらいになるのか、「SUUMO住みたい街ランキング2021 関東版」の住みたい街(駅)ランキング4年連続1位の「横浜」を例にとって比較してみます。

定年までのタイミングでは約1,600万円近く購入の方が負担は大きくなるものの、65歳以降、ローンを返し終わってからの年間の差額は233万とかなり大きくなります。

たった1年で233万円の差、住居費だけで90歳までの25年で単純計算233万円×25年=5,825万円開きが出ます。ここからそれまでに貯めてきた貯蓄と二人の退職金を差し引いたとしても、生活にかかるのは住居費だけではありません。

二人だけの自由な生活、よほど意識をしていなければ今までの支出もそれなりの水準だったはず。65歳の定年を迎えても、すぐに「その時の収入見合った生活」にはならないでしょう。

定年後の二人の年金が、住居費以外ですべて消費されてしまうとすれば、不足額は2,000万円どころか6,000万円以上です。

30年の期間をしっかり活用して(定年までの期間)

とはいえ、DINKSの一番の強みはやはり「ダブルインカム」。そして、収入を得られる期間の長さです。

二人のリスク許容度が許すのであれば、3か月~半年分の現金を直近の緊急資金として残し、それ以外はある程度の割合で運用に回すのも手です。コロナのような状況が起きたとしても数年で回復は見込めますし、何より二人で稼ぐことができるので、世帯としてマイナス分のカバーはそこまで難しくないはず。

会社で確定拠出年金が使えているのであれば、元本保証ではなく海外投資信託を多めに持つなどの積極運用を、個人ではNISAなどの非課税制度を活用して海外ETF※2を積立ててもいいでしょう。

※2「ETF」:“Exchange Traded Funds”の略。指数の動きに連動する運用成果をめざす、指数連動型の投資信託。上場株式同様、1日に何回も取引ができる。


仕事もプライベートもそれなりに自分の思い通りにできる30代。セカンドライフ、2,000万問題を意識しすぎる必要はないかもしれませんが、今の生活水準を定年後も維持したいと思うのであれば少しずつでも準備は始めるべきです。

まずは「将来どんな生活を送りたいか」ざっくりでもよいのでイメージを。そのイメージができたら、強みを活かして「積極的な運用」を取り入れてみてください。

© 株式会社マネーフォワード