台湾プロ野球で“根尾、藤原世代”が台頭 2年連続MVPは日本の独立リーグ出身投手

安打王の中信兄弟・王威晨【写真提供:CPBL】

日本でもプレーしたジャーニーマン、デポーラが台湾で開花。外国人初の2年連続MVP

台湾プロ野球の2021年シーズンを締めくくる台湾シリーズでは、元阪神の林威助監督率いる前期優勝の中信兄弟と、後期優勝の統一セブンイレブンライオンズが激突。中信が4連勝で統一を下し、11年ぶりの台湾王者に輝いた。今回は昨年末に行われた年間表彰式のほか、ストーブリーグの話題をたっぷりお届けする。

台湾プロ野球を運営するCPBLは昨年12月20日、台北市内のホテルで年間表彰式を開催した。投打各部門のタイトル表彰と共に、年間MVPと新人王、最成長選手賞の発表が行われた。

年間MVPには3選手がノミネートされていた。リーグ最多の17勝、防御率1.83と157奪三振は共にリーグ2位というカナダ人右腕、ブロック・ダイクソン(統一)、同2位の16勝、防御率1.77と187奪三振はリーグトップで投手「2冠」に輝いたドミニカ人左腕、ホセ・デポーラ(中信)、そしてリーグ4位の打率.311、22HRと81打点はリーグトップの打撃「2冠」、朱育賢(楽天モンキーズ)だ。

台湾シリーズでも投げ合ったダイクソンとデポーラの一騎打ちと見られる中、デポーラが149ポイントを獲得。ダイクソンを9ポイント上回り、2年連続MVPを獲得した。過去の2年連続受賞は2016~17年の王柏融(現・日本ハム)ら5人いるが、外国人選手では初の快挙となった。

デポーラは、台湾初年度の2020年は開幕5連敗のスタートも、その後修正し7連勝。最終的に16勝を挙げ最多勝など投手「3冠王」まで上り詰めた。そして昨季も、WAR(勝利寄与度)でリーグトップの5.62を記録するなど、チームの王座奪還に貢献した。大リーグでの登板は2015年のヤンキース時代に1試合のみ。その後日本(BCリーグ石川)、メキシコ、パナマでもプレーしたジャーニーマンは、台湾でその実力をついに開花させた。

新人王の富邦・曽峻岳【写真提供:CPBL】

進む若返り…ベストナインには根尾、藤原の日本代表下したメンバーがズラリ

また、新人王は57試合に登板し4勝0敗12セーブ、13ホールド、防御率1.80を記録した20歳の右腕、曽峻岳(富邦ガーディアンズ)が受賞した。高校時代には2019年U-18W杯の代表候補となるも落選。高校3年生ではスランプに陥り、ドラフトでは7位指名と即戦力と評価されてのプロ入りではなかった。

しかし、オープン戦で150キロ以上の速球を連発、猛アピールし開幕1軍入りを果たすと、勝ちパターンの中継ぎから、セットアッパー、さらに本来のクローザー陳鴻文の先発転向後は抑えを務めた。最速154キロの直球のみに頼らず、初夏のリーグ休止期間にカーブやフォークを磨いた効果もあり、シーズンを通じて結果を残した。

1軍初登板で、11個のアウトを全て三振で奪う鮮烈なデビューを果たした21歳の右腕、徐若熙(味全ドラゴンズ)は、台湾人投手トップ、リーグ5位のWAR2.92を残した。インパクトでは間違いなくNO.1だったが、打線の援護を得られず3勝7敗に終わり、得票数は3位に留まった。

ベストナインとゴールデングラブ賞をW受賞し、名実ともにポジションを代表する選手と認められたのは捕手の林岱安(統一)、二塁手の林靖凱(統一)、三塁手の王威晨(中信)、遊撃手の江坤宇(中信)、そして新人王でも得票数2位となった外野手の郭天信(味全)の5選手だった。

このうち、王威晨は初の打撃タイトルとなる最多安打も獲得した。8月に中信の前身・兄弟エレファンツのスター選手で、監督も務めた父の王光輝氏が死去。精神的にタフなシーズンだったが、主将として攻守でチームを引っ張った。コロナ禍で中止となった球宴の代わりに実施された人気投票でも1位に輝いた。大学時代の怪我の影響もあり、ドラフト13位という下位指名からリーグを代表するスター選手となった。

林靖凱、江坤宇、郭天信は2018年のU-18アジア選手権(宮崎)で、根尾昂(中日)や藤原恭大(ロッテ)ら甲子園のスター軍団を擁した日本に勝利した際のメンバー。当時も二遊間を組んでいた林靖凱と江坤宇は堅守が売りで、台湾野球に新たな風を吹き込んでいる。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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