地元「聖地巡礼」に期待 芥川賞候補の舞台の栃木・皆川地区 地元図書館もPR

皆のあらばしりの関連図書コーナー

 【栃木】第166回芥川賞(日本文学振興会主催)の候補作に選ばれた、乗代雄介(のりしろゆうすけ)さん(35)の小説「皆(みな)のあらばしり」の舞台となった皆川地区を訪れる人がじわりと増えている。惜しくも受賞は逃したが、同地区の歴史をまとめたリーフレットの配布枚数が約2倍になるなど地元関係者は「聖地巡礼」化に期待を寄せる。市栃木図書館では参考文献を展示しPRしている。

 皆のあらばしりは、同地区を舞台に歴史的書物を巡る男子高校生と謎の男とのやりとりを描いた作品。

 皆川公民館によると、作中に登場する皆川城址(じょうし)公園には昨年10月ごろから読者が訪ねてくるようになったという。公園内に設置されているアンケートには小説の読者が「想像以上に素晴らしい景色に感動した」などとコメントを残し、選考会が近づくと公園に設置しているリーフレットを手にする人が休日を中心に増加した。

 青木一忠(あおきかずただ)館長(60)は「新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で来訪者が減っていた中、土日を中心に訪れる人が増えた」と喜んでいる。

 一方、市栃木図書館では皆川地区をPRしようと、1階貸し出し返却カウンター前に関連する図書コーナーを設けた。「栃木市史」や「江戸の紀行文」などの参考文献と、「皆川一族」や「皆川歴代記」などの同地区に関連する図書計約30冊が並ぶ。

 黒川拓一(くろかわひろかず)館長(47)は「『皆のあらばしり』と参考文献などを比べて読むのも面白い。舞台となった場所に足を運んでいただくきっかけになれば」と期待する。2週間ほど展示する予定。

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