元女子プロが野球教室で行う「自分にしかできない指導」 お守りに込めた願いとは

元女子プロ野球選手の小西美加さん【写真:編集部】

小西美加さんは野球普及活動「CONNY PEACE」で女子だけの野球教室に参加した

女子選手が指導する女子だけの野球教室が増えている。昨年12月12日に柏・沼南スタジアムで行われた元女子プロ野球選手・小西美加さん(京都文教大女子野球部総監督)が参加した野球教室には、50人以上が参加した。小西さんが掲げたテーマは「自分にしかできない指導」。それが後の女子野球の発展に生きると考えている。

関西弁でツッコミを入れ、ときにはボケも交えながら、笑顔を絶やさない。柏女子野球倶楽部が主催した野球教室で、小西さんは選手の心をつかんでいた。教室を見ていた監督たちも「あんな楽しそうな選手らは見たことない」と口を揃えた。

野球普及活動「CONNY PEACE」を立ち上げ、精力的に活動中。中でも、目指しているのは女子野球の普及。自らにしかできない指導で、女子選手の成長を促す。

まず大事にしているのは、触って指導すること。「素晴らしい男性指導者はたくさんいますが、触ることだけは同性の特権なんです」と話す。言葉で伝えるのが難しいことや、選手によって言葉の捉え方が違うことなどもある。「とにかく触ります」と冗談半分で語るが、体を直接触ることで足の位置や腰の落とし方を正しい形に導く。

また女子ならではの課題を解決した練習メニューも多数取り入れた。ストレッチでは、膝が内に入り下半身の力をうまく伝えられない選手が多い。腰を開いた独自のストレッチを取り入れ、自然と腰の落とし方を身に着ける工夫もみられる。他にも練習では、全て自ら実践しながら指導。「女子選手でもこんなことができるんだって思ってもらえれば」と願う。

目指しているのは、女子野球での“縁”を増やすこと。自らが指導する京都文教大の女子野球部も、20歳近く離れていても同じグラウンドで練習を行う。「野球で出会った友達やプレーをしてきた相手は一生のものになります」。現在、女子硬式野球部がある高校の数は40を超える。選択肢も昔より広がっているからこそ、この流れを止めたくない思いがある。

野球教室後、選手らに渡したものがある。「こにたん御守り」だ。野球用品メーカー「ZETT」にお願いしてグラブの革と紐で作ってもらったもの。「CONNY PEACE」に参加した人だけが所持する特別なお守りに選手たちも喜んだ。グラウンドでまた会えるように――。小西さんはカラフルなお守りに強い願いを込めた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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