DeNA牧がプロ17年目の大和に弟子入りした理由 学びたかった“ベテランのエキス”

自主トレを公開したDeNA・牧秀悟【写真:球団提供】

夏場の疲労で7月は月間打率は.194の不振、五輪期間に救われた

プロ2年目のシーズンを迎えるDeNA・牧秀悟内野手が今月8日から22日まで、鹿児島県鹿屋市で11歳上の同僚の大和内野手と合同自主トレを行っている。大和の生まれ故郷へ、牧が“押しかけ弟子入り”した格好。リーグ3位の打率.314をマークするなど、文句の付けようのないルーキーイヤーを過ごした牧が“師匠”に大和を選んだのはなぜか──。

昨年の今頃は新人合同自主トレで球団のメニューに従っていたので、牧が自分で練習仲間を選び、文字通り自主的にトレーニングを行うのはこのオフが初めてだ。もっとも、昨年12月19日のトークショーに登場した時点では「まだ(1月の自主トレをどこで誰と行うか)決めていません。迷っています」と吐露し、周囲を心配させていた。年末近くになって、大和に2人での合同自主トレを志願。大和は「1人でやるつもりだったので、予想外も予想外。断るに断れなかった」と苦笑する。

プロ17年目の大和は、内・外野の全ポジションを高いレベルでこなす守備のスペシャリスト。最近3年間は遊撃と二塁に守備位置を絞っているが、阪神時代の2014年には外野手としてゴールデングラブ賞に輝いている。牧としては守備力アップも大和に弟子入りした理由の1つだが、メーンテーマは他にある。「大和さんは長年プロの世界でやってこられたので、1年間戦い抜くために、どんな準備をしているのかを学びたかった」と強調するのだ。

牧は昨年、137試合に出場し打率.314、22本塁打71打点。トータルで素晴らしい成績を残したが、6月中旬には腰の張りで欠場やスタメン落ちを繰り返し、7月の月間打率は.194(11試合36打数7安打)まで落ち込んだ。そんな牧にとって幸いだったのは、7月中旬から8月中旬までの1か月間、東京五輪開催に伴いペナントレースが中断され、疲労を取れたことだ。技術的にも「前半はプロの投手の速球に対し、前に飛ばない時期があったのですが、この1か月間で修正することができました」と言う。

昨年は首位打者にわずか3厘差も方向転換「打点にこだわっていきたい」

10月には月間打率.452(19試合73打数33安打)の快進撃で急上昇し、最終的には首位打者を獲得した広島・鈴木誠也外野手にわずか3厘差まで迫った。このオフは改めて「夏場に疲労で数字が上がらない時期が長かったので、フィジカルを鍛えたい」と課題を絞っている。そんな牧へ惜しみなくアドバイスを送る大和は「もともと能力の高い選手だが、これまでは基本的な動作をあまり理解せずにやってきたみたい。少しでも体の使い方を覚えれば、もっと楽にプレーできる。昨年はケガで試合に出られない時もあったが、そういうことも減ると思う」とうなずく。

34歳のベテランのエキスを、貪欲に吸収しつつある牧は「大和さんは『歳を重ねるほど、若いうちに守備で足を使う習慣をつけておくことの大切さがわかる』とおっしゃいます。自分は今のうちからやっていきたい」と語る。無理、無駄のない基本的な動作を丁寧に繰り返すことこそ、息の長い選手になる秘訣のようだ。

「少しずつですが、大和さんから『形が良くなっている』と言われます」と牧は手応えを得ている様子。昨年は二塁手として98試合、一塁手としても26試合にスタメン出場したが、「今年は1回から最終回までセカンドを守り、全試合フル出場したい」と目標を掲げた。

「バッターでいる以上、首位打者は誰もが目指していると思いますが、あまり打率を意識すると打てなくなりそうなので、打率よりチームのためにという意識で、打点にこだわっていきたい。100打点はいきたいですね」。2年目のジンクスなどどこ吹く風、あらゆる部門で昨年の数字を上回る意気込みだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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